2008年12月31日水曜日

ワンランク上の前衛になる・14

前衛のやるべきことを再確認しよう
ボールが見えなくなったら相手の目を見る

 ボールは、(1)見える間はそれをしっかり見る、(2)見えなくなったら相手の目を見る、と心掛けよう。(2)の方が分かりにくいと思うが、要するにボールが自分の後ろに行った場合は、相手前衛またはネットダッシュしそうな選手の目を見て、味方後衛が打つボールのコースや高さなどを予測するということ。そして、そのボールが処理されそうなときはフォローに入り、相手後衛へ深く行きそうなときは誘いや攻めの動きをするなど、臨機応変に動くのだ。
 率直に言って、これはかなり高度な技術。上級者の中でも、きちんとできている選手は少ない。しかし、これができるかどうかが、ランクアップできるかどうかの分かれ目でもある。実戦を数多くこなせば必ず身に付くものなので、ぜひマスターするように頑張ってほしい。ゲーム形式で声をかけながら、3~4時間ほどチェックすれば大丈夫だ。

2008年12月30日火曜日

ワンランク上の前衛になる・13

前衛のやるべきことを再確認しよう
つま先荷重で動くこと

 選手は、つま先荷重(つま先に重心を乗せる)のフットワークが基本。特に前衛は、フェイントの切り返しの連続なので、つま先荷重が大切なポイントだ。ネットダッシュでは、相手後衛がバックスイングしたときに一瞬ダッシュが止まってかかと荷重になるが、その後すぐにつま先荷重にしなければならない。かかと荷重だと、特にボールが正面に来たとき、身体をさばけない。いずれにしても、軽快な足の動き出しは、つま先に体重をかけることから始まると覚えよう。ピンと来ないという人は、ジャンプするときに、つま先荷重とかかと荷重のどちらが自然かを考えれば、以上の理屈が理解できるはず。両足ともつま先を上げてジャンプしても、うまくできないはずだ。

2008年12月29日月曜日

ワンランク上の前衛になる・12

前衛のやるべきことを再確認しよう
前衛の動き方、ボールの見方のポイント

 瞬時の俊敏な動きが要求される前衛にとっては、待球姿勢をきちんととることが大切。ヒザにある程度のゆとりを持たせ、ネットに近ければ高めの姿勢、ネットから離れれば低めの姿勢をとるのが基本だ。
 なぜ、ネットから離れれば離れるほど低めの姿勢にするのかというと、ローボレーを打たされることが多くなるからだ。逆にネットに近ければ、ネットの高さがある分相手も足元へは狙いにくいので、少々高めの姿勢でもかまわない。その場合は、ラケットもやや高めに構える。利き腕だけに頼らず、イチョウの部分に反対の手を添えて、身体とラケット面をリードしていこう。
 それから、待球時の身体の向きに関しては、相手の打球者に対して「正対」する事を忘れずに。両肩を結んだ線と、打つ選手に向かう仮想戦が直角に交わればいいのだ。

2008年12月28日日曜日

ワンランク上の前衛になる・11

前衛のやるべきことを再確認しよう
「押し出しプレー」も心掛ける

 「押し出しプレー」とは、ラインぎりぎりなどの難しい所を相手に狙わせて、アウトやネットなどのミスを誘う方法。たとえば、相手前衛にボールが行った場合では、その選手が打つ瞬間に自分の動きを見せてやればいいだろう。
 もちろんその時は、ただむやみに動くのではなく、相手前衛が打ちそうな方向を瞬時に予測して動くこと。打とうと思っていた方向にサッと動かれると、相手は拾われまいとして、より際どい所へ打とうとするだろう。そうすると、余計な力が入ってミスすることも増えるはずだ。少なくとも、相手のネットプレー1本で決められる可能性は低くなるし、思わぬミスでラッキーなポイントを取れることもある。もちろん間違った方向(予測違いの方向)へ動いてしまっても、全く気にする必要はない。相手前衛にしてみれば、打つ直前に動かれること自体、大変イヤなものだからだ。
 なお、動くときは「入射角と反射角の原理」を頭に入れておくこと。味方後衛が打った後でポーチボレーされたボールは、相手前衛のラケット面に対して、入った角度とほぼ同じ角度で飛んでいくのだ。

2008年12月27日土曜日

ワンランク上の前衛になる・10

前衛のやるべきことを再確認しよう
勇気を持ってラリーのボールに近づく

 いつでもテンポ良くポイントを取れればいいが、実戦では後衛同士の長い打ち合いになることが少なくない。そしてそういう時こそ前衛の力量が問われる。
 つまり、このような膠着状態では、前衛がどれだけ勇気を持ってラリーのボールに近付けるかが鍵。前衛同士のポジション取りの競い合いとも言える。ミスを恐れず(実戦ではミスは付き物)に、勇気を持ってネットプレーに挑戦してほしい。気負わずに、まずは1試合につきポーチボレー3~4本、ポーチスマッシュ1本を目標にしてみよう。

2008年12月26日金曜日

ワンランク上の前衛になる・9

前衛のやるべきことを再確認しよう
相手後衛に嫌がられるポジションにつく

 前衛の「やるべきこと」として第一に挙げられるのは、相手後衛に嫌がられるポジションにつき、相手後衛が打つボールのコースを限定させるということだ。
 そうすれば、甘いボールが来やすいし、無理なストロークなど、相手のミスによってポイントを得る確率も高くなる。ただしその場合は、味方後衛が打ちにくくならないように注意。守備範囲としては、自分が全体の3分の2、味方後衛が3分の1くらいをだいたいの目安に、適切なポジションを工夫しよう。調子の良いときは、このくらいの感覚でプレーする。

2008年12月25日木曜日

ワンランク上の前衛になる・8

戦術面のポイント
できるだけ同じ陣形でプレーする

 相手の力量にもよるが、実戦では陣形を崩されることがよくある。しかし、陣形はあまり変えずに、できるだけ同じようなパターンで戦った方が有利だ。それがまた上達するための秘訣のひとつでもある。
 前衛としては、まず相手後衛に打球のコースを変えさせないことを心掛けよう。相手の得意・不得意を素早く見極め、ここにしか打てないというようなパターンに持ち込むのだ。これには、かなりの根気も必要。焦らず、じっくりと攻撃していこう。
 もちろん、前衛ひとりが頑張ってもうまくいかない。後衛としては、ミスをせずにラリーを最低10本くらいは続けられるようにしておきたいものだ。

2008年12月24日水曜日

ワンランク上の前衛になる・7

戦術面のポイント
積極的な気持ちでプレーし、相手の得意なショットを封じる

 当然のことだが、ワンランク上の前衛を目指すなら、常に積極的な気持ちを忘れてはならない。この積極性が、威力のあるポーチボレーやスマッシュ等に必ず結びつくし、何よりも攻撃的な姿勢は、相手を威圧することにつながるものだ。相手に自分の姿を見せつけて、1ゲームぐらいは「自分1人の力で取る」くらいの意気込みでプレーしてもいいだろう。 
 また、相手の得意なショットを徹底的に封じ込むのも非常に大切なこと。どうにも手の施しようがなくなった時など、プレーヤーはどうしても得意な技術に頼りたがるが、それをあらかじめ極力封じておけば、もう自分の有利さは絶対に揺るがないはずだ。

2008年12月23日火曜日

ワンランク上の前衛になる・6

戦術面のポイント
波状攻撃などに挑戦

 ポイントを挙げるための方法はいろいろある。たとえば波状攻撃。これは、積極的にどんどん責め立てていって、ポイントにつなげるやり方。積極的にポーチに出る、中途半端なロブは迷わずスマッシュで決めにいくなど、とにかく思い切りの良さが必要になる。前述の「苦しい状況の中で生まれたチャンスを逃さず逆襲していく」のとは、ちょうど逆のタイプの方法だ。
 また、相手をどんどん追い込んでいくのも有効な手段。まず試合の序盤でラリーをたくさんやって(相手に積極的に打たせて)、手の内をすべてさらけ出してもらうのだ。このとき自分の方は、全力で向かわなくてもいい。6割から7割の力で十分だ(もちろんこちらも作戦を立てての対応である)。弱いペアほど「先行息切れ」のパターンに陥りやすい。この方法で、ゲームを重ねるにつれて、じわじわと相手を追いつめていってみよう。

2008年12月22日月曜日

ワンランク上の前衛になる・5

戦術面のポイント
相手の攻めに耐えて逆襲する

 戦術面に関しては、まず相手の選手が「どこへ」「どんなボールを」「どんなタイミングで打ってくるか」を素早く予測すること。これは慣れていないとなかなか難しいことなのだが、練習や試合の中で、次の1打の読みに磨きをかけていく。素早く瞬間的に動かなくてはならない前衛にとっては、この予測はなくてはならないものだ。
 もちろん、その下地となるのはコンビネーションの確立だ。自分が、あるいはパートナーが、相手の厳しい攻めに対して耐え、そして苦しい状況の中で生まれたチャンスボールを逃さず逆襲していくことが、何よりも大切。上級者ほど一瞬で、ピンチをチャンスに変えることができる。

2008年12月21日日曜日

ワンランク上の前衛になる・4

技術面のポイント
体の動きでボールをさばく

 ネットプレー、特にボレーは、体の動きでボールをさばくこと、これが大事だ。利き腕とラケットの動きだけで打っている人がよくいるが、これではレベルアップは望めない。ラケットはある程度固定しておき(大きく動かさず)、体をしなやかに動かして、速いテンポのネットプレーに対応していこう。
 特に、相手からのボールが体の正面に来たときなどは、よりしなやかな体のこなしが必要。実戦では体の正面を狙われやすいからだ。飛んでくるボールの軌道から体をさっとそらせて、ラケットは決して振り回さず、面を作って柔らかく返すように心がけること(半身の捕球体勢で、ラケットに添えていた手を最後に離す)。

2008年12月20日土曜日

ワンランク上の前衛になる・3

技術面のポイント
門を狙って打つ

 門を狙って打つ-要するに、相手ペアの間をめがけて打つということだ。しかし、上達のためには必要不可欠なこのことが、意外とできていない場合が多い。相手前衛に取られるのを恐れて、どうしても狙えないようなのだ。だが、理にかなったこの鉄則を使わない手はない。相手2人の間に打てば、間を抜けてその1本で決まる可能性も高いし、角度をつけてサイドへ打つよりも、次の1本に対する守りが楽だからだ。レベルが高くなればなるほど、あえて狭き門を狙ってくるもの。門が狭くても思い切りよく打って決められるかどうかが、中級者と上級者の違いのひとつと言えるだろう。

2008年12月19日金曜日

ワンランク上の前衛になる・2

技術面のポイント
ローボレーの強化

 レベルの高い相手との試合では、ネットから離れたポジションでローボレーを打たされることが多い。サービスライン付近で低いボールをうまく打てるかどうかが、ポイントの行方、そして試合の行方を大きく左右すると言ってもいいだろう。ローボレーを打つときに注意すべきなのは、コースよりも深さである。相手のベースライン近くに順回転のボールを送れば、高めに弾んで伸びていくので、相手を後方へ追いやることができ、すぐ次に攻撃されることはまずない。
 もちろん深さだけでなく、コースを狙っていければそれに越したことはない。基本は、相手のベースラインを3分割したその内側に打つこと。自分から見て後衛が左寄りにいる場合は、左3分の1の内側付近を狙っていこう。こうすれば、次に角度のついたボールは返ってこないので、非常に守りやすいのだ。コーナーなど、サイド寄りに打ってしまうと、角度をつけて切り返されやすいので注意。
 そしてローボレーを打った後はネットの前で相手に「姿を見せる」すなわち動きを見せることが大切。動くことによって、相手前衛の足を止めたり、後衛にいろいろと考えさせて迷わせたり、打つコースを狭めさせたりするのだ。なお、後衛(自分のパートナー)が短いボールなどによってやむを得ず前に引っ張り出された場合は、とことんつないでいくこと。ネットプレーの不得意な後衛が無理に決めに行こうとしても、ミスをしやすい。ラリーに持ち込み、機を見てベースラインに戻り、本来の陣形で勝負しよう。

2008年12月18日木曜日

ワンランク上の前衛になる・1

技術面のポイント
大きく動きながらのストロークを完璧に

 「自分は前衛だから」といって、ネットプレーだけを練習していてはいけない。前衛・後衛と役割は決まっているが、高いレベルを目指すなら、基本的にすべてのショットをこなさなければならない。
 したがって前衛であっても、サーブはもちろん、ストローク力の強化が不可欠。特に大事なのは、大きく動きながら(走りながら)のストロークだ。実戦では、前後左右、さまざまな方向へ動きながら打たなければならない。このようなランニングショットは、軸足に体重を乗せにくいので、通常のストロークよりやや難しいかも知れないが、ラケットヘッドを下げてからインパクト面を作るように心がければ、手首のゆとりができ、ドライブ回転(順回転)の安定したボールが打てる。

2008年12月17日水曜日

タメを生み出すポジション取り・10

どこへ移動すれば良いのか

 相手が打ち込んでくるボールを待ち構えるといっても、どこで待てばいいのだろう。「ボールを打った後は必ず自分のポジションに戻れ」と教えられた経験は誰しも持っているだろうが、はたして本当にそれだけで十分だろうか。
 もしも、相手が打ち返してくるコースが分かっていたとしても、自分のポジションに戻らなければならないのだろうか。そんなことはないはずだ。分かっているなら最初からそのポイントへ走っていけば良い。「そんなことできるはずないやないか」と思う人もいるだろう。
 だが、完全な位置を知ることはできなくても、相手がボールを打つ位置から自分のコートに入れてくるためには、どのコースで飛んでくる確率が一番高いかを計算すれば、だいたいどこで待ち構えているのが効果的かを知ることができる。ボールが飛んでくると予測される範囲の中央にいるのが、ベスト・ポジションということになる。
 相手が打ってくるであろう位置をあらかじめ計算し、そこに早く移動して待ち構える。これこそが、余裕を作り、十分なタメを生み出すコツなのである。

2008年12月16日火曜日

タメを生み出すポジション取り・9

早い移動を実現するには…

 では、早く移動するにはどうすれば良いか。自分がボールを打った後、打球を見ながらボーッとしていることなく、すぐに次の打球に備えて動き出すことがもっとも肝心だ。ブロック予選レベルの選手の中には、自分が打ったボールの行方をジーッと見ている人も多いが、これではいつまでたってもタメのあるフォームを身につけることはできない。ボールを打った瞬間から次の打球位置に素早く移動することを考え、相手が打ち込んでくるボールを待ち構えていれば、時間的余裕がしっかりしたタメを作り出してくれる。

2008年12月15日月曜日

タメを生み出すポジション取り・8

早い準備をするには…

 さらに解き進んでみれば、自分がボールを打ってから次の打球を打つまでの限られた時間の中で、いかにして余裕を作っていくかが課題となってくる。
 この答は簡単にはじき出せる。つまり、与えられた時間の中で動き始めを早めるか、終わりをさらに遅くするかだ。終わりを遅くするのはうんと下がって打てばいいことだが、攻撃的な打球は打てないし、相手にも十分すぎるほどの時間を与えてしまう。
 ならば動き始めを早くする方が正解だ。早く次の打球体勢の準備を始めるのだ。要するに、早く次の打点へ移動すれば、準備するための時間を確実に延ばすことができる。
 打球動作の中で早い時期にタメを作るのみならず、その打球動作に入ること自体を早めてしまう。これで次の打点へ早く移動することができる。

2008年12月14日日曜日

タメを生み出すポジション取り・7

時間的余裕を生むには…

 ならば時間的余裕を持たせるためにはどうすれば良いのか。簡単に言えば、「準備を早くする」ということだ。タメられない人というのは、ボールが出てきたときには膝が伸び切っていて、ネットを越えてきたあたりから動作を始めるので、あわててラケットを振ることになってしまう。これではタメを作るどころか振り遅れてしまう。自分のスウィングに間を作ってやるには、相手の打球に合わせて膝を曲げておき、早くから打球動作の準備をしておかなければならない。

2008年12月13日土曜日

タメを生み出すポジション取り・6

タメを作るには…

 いくら早く打球体勢に入れといっても、あわててラケットを引くようではタメはできない。バタバタと準備していては、かえって気持ちに焦りを生じる。タメを作るには、身体の動きに時間的余裕を持たせることが必要なわけだ。

2008年12月12日金曜日

タメを生み出すポジション取り・5

タメを作るには何をすれば良いか

 よく「君はタメがないからもっとタメて」と言われる人にとって、いったい何がタメで、どうすればタメられるかわからない場合も多い。「タメ」を作るには、まずどうすれば良いのか。

2008年12月11日木曜日

タメを生み出すポジション取り・4

打点に幅を持たせる「間」

 下半身のバネにパワーをためておけば、打点までのスウィングがたとえ十分でなくても、それほど貧弱な打球にならずにすむというメリットも生まれる。
 ということは、タメがあることによってボールをほんの少し遅らせて打つことができるわけだ。膝が曲がっていることで身体にパワーが蓄積されており、多少後ろの打点でも打球を持って行くことができる。打点はひとつであるように見えるが、タメのできている選手の感覚としては、幅を持った線上にいくつもの打点が存在する。いつも一定の打点で打っていれば相手も早い段階で打球コースを予測することができるが、打点を自在に変えることができれば、打ち出すコースは相手に読まれにくくなるというメリットも生まれる。
 また、後ろ膝が曲がった状態で構えることができれば、相手の打球に食い込まれたとしても、まだ有効な打球を打ち返す余裕が残されることになる。それを知っていれば、身体に余計な力を入れることなく、落ち着いて対処することができる。タメは精神的にも余裕を与えてくれる重要な要素となるのだ。

2008年12月10日水曜日

タメを生み出すポジション取り・3

タメは推進力の土台、第1段ロケット点火直前状態・2
肩を入れる第2のタメ

 もう一つの「タメ」として「状態の捻り」という要素がある。後ろ足の膝を曲げ、膝頭を斜め後ろに向けてやれば、状態は自然と軽いクローズド・スタンス同様になり、いわゆる「肩が入った状態」になる。これが第2のタメである。
 膝のバネが重心移動による前への推進力なら、これは捻れを戻す回転力を増してくれるものだ。そればかりではない。グッと肩を入れることで、相手はこちらがどこに打ってくるかを読むことが、きわめて困難になる。
 こちらは視覚的に印象が強いため、相手に「いかにもタメられている」という感覚を与え、プレッシャーをかける効果も大きい。

2008年12月9日火曜日

タメを生み出すポジション取り・2

タメは推進力の土台、第1段ロケット点火直前状態・1
膝をバネのように使う、第1のタメ

 具体的な身体の動きとして「タメ」を考える場合には、ボールを打つための構えに入ったときに後ろ足の膝を曲げていくこと、この膝の曲げ具合が間の取り方、タメに大きくつながる。
 例えば相手の速い打球を受けるときでも、膝を曲げずに突っ立ったままでは、ただ力のない打球を返すだけしかできない。この状態で強い打球を打とうとすれば、状態に力が入ってますますパワーは発揮しにくくなる。
 また、スマッシュを打つときにも、リズミカルなステップを行いながら打球のポイントに合わせて、後ろ膝を沈み込ませて間を取ってやる。この後ろ膝の沈み込みが「タメ」となり、振り出しのきっかけがつかみやすくなるのだ。
 それに膝が伸びたままスマッシュしようとすると、最後にバランスを崩してしまうことになる。
 「タメ」はすべてのストロークにあると思って良い。相手からボールが打ち出されたときに後ろ膝を曲げて間を取ってやることでスウィングをスムーズに行えるようになるわけだから、グラウンド・ストロークはもちろん、ボレー、スマッシュ、サーブにも「タメ」の意識はあるはずだ。
 例えばロブが上がってスマッシュを打とうというとき、時間がありすぎるためにバタバタしてしまう場合がある。こんな時しっかりと膝をグッと入れてタメを作っておけば、ボールがどんな具合に変化しても対応できるようになる。
 ここまで膝の曲げばかりにこだわってきたようだが、実際にコートに立ったときにはあまりここに意識を持って行きすぎない方が良い。あまりに身体の一点に意識を集中しすぎると、身体全体に力が入ってしまうことになる。
 要するに下半身にバネを作ってやるのだ。後ろ足の膝を曲げることは、重心移動のための準備、ここにパワーをためることで打球方向への推進力の土台を作ってやることになる。

2008年12月8日月曜日

タメを生み出すポジション取り・1

パワーとタイミングの制御装置、それがタメ

 次の動作に移るためのエネルギーが充満した状態、これがタメと言われるものである。金槌で釘を打つときなど、それを振り下ろす直前に一拍ある。
 ソフトテニスでは、ボールを打つための準備段階、それがきちっとできているからスウィングするときにパワーが発揮されることになる。
 タメは、強く打つためだけではなく、逆にボールをゆっくり打つことも、必要な要素となる。打ち急ぐことなく、ボールを十分に引きつけて打つには、最終的なスウィングに向けてのタイミングの取り方が重要で、特に振り出す直前の間の取り方、降り出すきっかけが大きな鍵を握ることになる。タメはそれらを調節する制御装置の役目も果たすのだ。

2008年12月7日日曜日

相手の身体能力を見極めて勝つ方法・16

調子に乗りやすい相手の場合

 このタイプの選手の場合、足があるので走って得意なショットで対応してくる。つまり、相手が得意なショットを多く打つ場合は負け試合、逆に得意なショットを封じたら勝ちになる

典型例・勢いに乗ると手がつけられなくなる
 自分のリズムで戦っているときは強いが、リズムを狂わされるとガタガタになる傾向がある

攻め方・得意なショット・苦手なショットを早く見抜く
 1.試合の序盤に相手に色々なことをさせ、苦手とするショットを発見したら徹底的にそこにボールを集める攻めを行う
 2.調子に乗りやすい選手は、得意としているショットのそばに欠点を持っていることが多い。得意なショットの周辺にそれまでとは違った性質のボール(長さやスピードに変化をつける)を送って様子を見てみる

対処法・相手のことを考えず、自分のペースを守る
 調子がよいのだから、とにかく相手のことは考えず自分が得意としているプレイをキープする。足を動かし続け、相手が何をしてきても常に自分の打点でボールをとらえることだけを考える

2008年12月6日土曜日

相手の身体能力を見極めて勝つ方法・15

相手が左利きの場合

 左利きは打つショットが特別なのではなく、左利きの打つボールに接する機会が少ないため慣れていないだけ。どうしても左利きの相手が苦手な場合は、思い切ってライジングでボールを処理してみる

典型例・スライス・サーブに対応できないことが多い
 左利きの打つ前衛側のスライス・サーブは、球種が分かっていても十分なレシーブができない

攻め方・レシーブの位置を1歩前にする
 左利きのスライスも、後衛側の右利きのスライスと同じ曲がり具合のはずだが、頭にインプットされている曲がりのイメージ量が圧倒的に違う。野球の左投げと左利き打者の関係と同じで、いかにも打ちづらそうに見えるが、それは右利き対右利きの関係の裏返しに過ぎない。しかし、右利きレシーバーにとってはバック側に入ることもあり、実際にレシーブが難しいのは事実。一歩前に構え、切れていく前にライジングで処理するように心がけるのがコツ。

対処法・サーブの球種に変化を持たせる
 前衛側に打つサーブでは、相手はバック側を最も警戒することになるので、その最も効果的なバック側を生かすためにも、センターへのフラット・サーブや、相手の身体に向かって跳ねるスピン・サーブを覚えるようにする。これらのサーブは完璧なものでなくても構わない。「見せ球」としての効果が十分に発揮されれば、それだけで相手を混乱させることが可能

2008年12月5日金曜日

相手の身体能力を見極めて勝つ方法・14

相手の予測がいい場合

 相手の予測がいいということは、それは才能だから、その部分で勝負すると不利である。下手にかわすことを考えるより、「次はどうする」と決めてプレイを行うようにする

典型例・逆を突いたつもりでも待たれている
 相手が予測のいい選手である場合、どうしてもパスが抜けない、逆にパスを簡単に抜かれてしまう、という場合が多い

攻め方・フェイントを効果的に使う
 予測がいい選手というのは、視野が広く相手のショットをギリギリまで見ていられる選手である。だからそこを逆手にとって、フェイントを使ってその場所で動かず相手をハメることを考えたり、同じ構えから違う球種のボールを打つようにする

対処法・最初からコースを決めたボールを打つ
 相手を観察してプレイを行うことを基本としながらも、相手がそこを逆用してきたと感じたら、今度は相手を見ることを止めて、「決め打ち」をしてみる。相手の動きに対して受動的に動くテニスから、自分で組み立てる能動的なテニスに転換するわけである。この両者を使い分けることで、本来の受動的テニスがさらに効果的なものとなる

2008年12月4日木曜日

相手の身体能力を見極めて勝つ方法・13

バランスが悪い相手の場合

 バランスが悪い相手はショットの安定性にも欠けるので、同じポジションで打たせないことが崩すポイント。一発勝負で崩そうと考えず、何球かをセットにした攻撃を心がける

典型例・ドタバタした動きで安定性に欠ける
 バランスが悪い相手と当たった場合、さらに相手のバランスを崩すことを考える

攻め方・正反対のショットを2本続けて打つ
 バランスが悪い選手というのは、ほとんどの場合、次のショットに対する準備が遅い選手である。だからこそ、性格の違うショット(ツイストやロブなど)を2本続けて打って、相手の準備の遅さを突き、さらにバランスを崩すような攻めを考える

対処法・スプリット・ステップをすべてのプレイで行う
 相手がボールを打つときに左右均等のバランスでボールを待てるようになれば、準備の遅れは解消できる。バランスが悪い人は、「打ち終わりは次のショットの始まり」との意識を持つことが大切。自分が打ったら、すぐにスプリット・ステップを行い、相手のボールに備える。スプリット・ステップは、ボレーに出るときだけに行うものではなく、ベースラインでのプレイでも行うべきものである

2008年12月3日水曜日

相手の身体能力を見極めて勝つ方法・12

ラケット面が薄い相手の場合

 ラケット面が薄い選手は手首を効かせて打つことになるので、ショットの安定性に欠ける反面、ヘッド・スピードが速く強烈なボールを持っていることが多い。一定のスウィングをさせないことが崩すポイント。速いボールと遅いボールのように、2球を1セットの攻めを心がける

典型例・思いがけないスピード・ボールを打たれる
 ラケット面が薄く手首を効かせて打ってくる相手は、安定性に欠けるが、ヘッド・スピードが速いのでボールにはスピードがある

攻め方・正反対のショットを2本続けて打つ
 手首を過度に使ってプレイする相手はボールを点でとらえる傾向にあるので、そのリズムを狂わせるために長いボールに短いボールを織りまぜるなどの、緩急をつけた攻めを考える

対処法・スウィングの方向を考える
 薄い面でフラットにボールをとらえようとすれば、どうしても正確な打点は限られ安定性に欠けることになる。しかし、下から上に振り上げる打法ならばスウィングの軌道上に打点があればいいので、手首を過度に使うことがデメリットとならず、逆に鋭くラケット・ヘッドを回すことができ、速いボールを打てるようになる

2008年12月2日火曜日

相手の身体能力を見極めて勝つ方法・11

相手が柔軟性に欠ける(動きが硬い)場合

 動きが硬い相手に対しては低いボールで攻める。膝に柔軟性がないタイプの選手ならば、その低いボールの攻めで相手のミスを誘うことができるはずだ

典型例・膝をうまく使えない
 膝の柔軟性に欠けることが多く、低いボールの処理が下手

攻め方・ラリー中でもツイストを多用する
 膝に柔軟性のない選手は、ストロークではダウン・スウィングになり、ロー・ボレーではラケット・ヘッドが落ちる欠点があるので、できるだけ低い打点で相手に打たせるのがコツ

対処法・楽な構えやタメを意識する
 柔軟性に欠けるタイプの選手は身体が硬いのかというと、必ずしもそういうわけではない。前屈のような、単純な柔軟性はあっても、動きが硬いという場合にプレイの柔軟性のなさが指摘される。その最も大きな要因は、過剰な力みや緊張といった精神的なもの。ボールを打つまでにどれだけリラックスした状態を維持できるかで、身体は硬くなったり柔軟になったりするものだから、できるだけ力を抜いた状態で構えたり、ボールを今までより引きつけることを意識してプレイするようにする

2008年12月1日月曜日

相手の身体能力を見極めて勝つ方法・10

相手前衛の身長が低い場合

 相手前衛の身長が低い場合、やはり効果的なのは高く弾むボールやロブになる。しかし、身長の低いペアはそうした攻撃に慣れていて対処がうまい場合も多い。やはり、試合の序盤で探りを入れるショットを打つことが大切

典型例・高いボールへの対処が難しい
 小柄な選手は動きが俊敏なことが多いが、どうしても高いボールで攻められると苦しくなる

攻め方・頭上を攻めるロブ
 前衛の身長が低いということはロブが常にプレッシャーとなる。ロブを多用して、警戒心を頭上に植え付けることで、左右への対応も鈍くなる場合が多いので、ロブは絶対有利な攻めになる

対処法・速い展開のゲームを心がける
 前衛が小柄なペアはロブで相手に主導権を握られると苦しくなる。そこでライジングでボールを処理する能力を高めたり、ボレー戦に持ち込んだりする、自分たちの小回りを生かしたゲームで、相手よりも先に攻めるようなプレイを心がける

2008年11月30日日曜日

相手の身体能力を見極めて勝つ方法・9

相手前衛のリーチが広い場合

 リーチがある相手の場合は、よりギリギリのサイドを狙うより、相手の身体の正面を狙ってみる。ミスの危険が少なく効果の上がる攻撃法である

典型例・ネットに出られたときパスが抜けない
 リーチが広い相手だと左右にパスを打ったとき、自分側のオープンコートが広くなり、やっと届いたボレーでエースを取られる場合が多い

攻め方・ボディ・ショット
 左右に抜けないのならば、抜こうと考えず相手にミスさせることを考える。リーチの広い選手は左右への対応が的確な反面、身体に近いボールに穴を持っている場合が多い。また、身体に近いところの速いボールは、たとえボレーされたとしても1本で決まる場合は少なく、2本目のショットでチャンスを拡大することもできる。

対処法・壁打ちボレーで身体のさばきを覚える
 至近距離で行う壁打ちボレーは身体に近いところのボレーを上達させるために最適の練習法。ひとりでもできるので積極的に行うべきである。また、リーチが広い有理を最大限生かすために、ポーチを多用するようにする。ポーチに出て、正面に来たボールで抜かれても、ペアがそのボールをカバーしてくれるので、気にしなくても構わない

2008年11月29日土曜日

相手の身体能力を見極めて勝つ方法・8

相手が長身プレイヤーの場合

 長身プレイヤーは足元に欠点を持っていると言われるが、意外に上が弱い選手も多い。試合の序盤では足元を攻めると同時に頭上の攻撃を試してみるのも手である

典型例・ネットに出られたときロブを上げられない
 伸長の高い選手がネットに出てくると、それだけでプレッシャーがかかる

攻め方1 ・足元に遅いボールでロー・ボレーをさせる
 長身プレイヤーはえてして足元のボールに弱いもの。とにかく相手に低い打点でボレーをさせるように心がける。
攻め方2・あえてロブを上げる
 ファーストサーブの速い選手がボレーが下手なのと同様に、長身プレイヤーはスマッシュを打つ機会が少ないためスマッシュが下手という場合も多い。試合の序盤であれば、初めから「ロブは抜けない」と考えるのではなく、スマッシュの力を試す意味でロブを活用してみるのも一つの手段である

対処法・最初のボレーを深く入れる
 スマッシュは得意という前提の元に、深く入ったボレーには、相手はロブを上げて対処する場合が多い。つまり、深いボレーとスマッシュを1セットにした攻め方を取り入れるのが、長身のメリットを生かす最高の攻めとなる

2008年11月28日金曜日

相手の身体能力を見極めて勝つ方法・7

相手が力任せのテニスをしてくる場合・3

典型例2・ファースト・サービスが強力
 力のあるタイプの選手は、ファーストサービスを思いきり打ってくる場合が多く、しかも入ると速い

攻め方・ロー・ボレーをさせるつもりのレシーブ
 1.相手のサーブが速いということは、返すだけでもレシーブにスピードがつくので、相手がネットにつく前にレシーブが返っていくことになる
 2.ファースト・サーブが速い選手はロー・ボレーが下手な場合が多い。ボレーの準備が遅れるからである。

対処法・スプリット・ステップを確実に行う
 スピードのあるファースト・サーブを打つ人は、ボレーの準備が遅れがちである
 1.たとえサービスラインまで行かない死角であっても、相手がスウィングに入ったらスプリット・ステップを行う癖をつける
 2.スプリット・ステップの基本は、行う場所ではなく、行うタイミングであることを忘れずに

2008年11月27日木曜日

相手の身体能力を見極めて勝つ方法・6

相手が力任せのテニスをしてくる場合・2

典型例1・ベースラインからバンバン打ってくる
 典型的な能動タイプの選手。自分のリズムで打っている分には手がつけられないことが多い反面、リズムを狂わされると案外もろい。

攻め方・ある程度冒険しても速いボールを混ぜる
 1.相手のリズムで打たせないために、相手のボールと同じかそれ以上のスピードボールをラリーの中に入れる
 2.スピードボールをスピードボールで打ち返すのは難しいものだが、力任せに打ってくる相手は打球に変化をつけられないので、リズムを一遍に狂わせることができる

対処法・1本で決めようと考えない
 リズムの変化に対応が難しい力任せのテニスをする選手は、
 1.2本で決める組み立てをいつも考える
 2.打つ前にフッと息を吐いて力まないようにするということで、ショット1本に頼らない精神的な余裕を持つことができる

2008年11月26日水曜日

相手の身体能力を見極めて勝つ方法・5

相手が力任せのテニスをしてくる場合・1

 相手が常に100%の力で打ってくるような能動タイプの選手なら、逆に崩しやすい。相手のリズムを崩すことだけを考えてプレイすればよい

2008年11月25日火曜日

相手の身体能力を見極めて勝つ方法・4

相手が非力なタイプの場合・3
典型例2・サーブが弱い
 非力な相手はサーブに弱点を持っている場合が多い

攻め方・ファーストサーブを失敗させる
 1.サーブが弱い相手は、ファーストサーブをなんとか入れようと考えるもの。そこで相手のファーストサーブのときに、レシーブのポジションを前に取ったり、後ろに取ったりして、相手にレシーバーとの距離感を狂わせ、ファーストサーブを崩す
 2.レシーブの位置を変えることによって「相手は次に何をしてくるのか?」と常に考えさせることによってファーストサーブを崩すことにもなる

対処法・サーブ&ボレーの練習を徹底する
 非力なサーバーはサーブを強化することよりも他のことを考える
 1.速いレシーブに対する正確な面作り
 2.足元に落とされたときのロー・ボレーの対処
 といった、相手にレシーブされた後の処理をうまくすることによって、サーブは強くないけれども簡単にはゲームを取られないタイプの選手になることを目指す

2008年11月24日月曜日

相手の身体能力を見極めて勝つ方法・3

相手が非力なタイプの場合・2

典型例1・こちらが打った強いボールに対処できない
 非力な相手と対したときには、スピードのあるボールを打つことや強烈な回転をかけたボールを打つことで相手にプレッシャーをかけることができる。

攻め方・さらに効果を上げるための緩いボール
 1.相手が非力な場合、非力だからこそ緩いボールを強く打つことができない
 2.緩いボールを効果的に使うことによって、スピードのあるボールや回転をかけたボールがさらに有効打になる

対処法・力に力で勝負せず、相手のボールに合わせる打ち方をマスターする
 自分が非力なタイプだと思っても、悲観することはない
 1.今までよりもテイクバックを小さくするよう心がける
 2.スウィート・スポットでいつも打てるようにボールをよく見る
 3.ガットを今までより少し緩めにして、相手の力を利用する
 4.テイクバックではできるだけ力を抜き、インパクトでしっかり握るような強弱をつけたスウィングを覚える
 などの方法で非力を補うことは十分に可能

2008年11月23日日曜日

相手の身体能力を見極めて勝つ方法・2

相手が非力なタイプの場合・1

 選手には、自分から積極的にプレイを作っていく能動タイプの選手と、相手に合わせてプレイを行う受動タイプの選手がいる。一般的には力のある選手は能動タイプ、非力な選手は受動タイプのプレイを行う傾向にある。試合などで対戦した場合、相手がどちらのタイプの選手か考えて対応していくと、試合の主導権を握ることが可能

2008年11月22日土曜日

相手の身体能力を見極めて勝つ方法・1

敵を知り、己を知り、地の利を知れば百戦危うからず

 相手の身体的特徴、それに伴うプレイの特徴を見極め、こういったタイプの相手にはこのような攻め方が有効だ、という実戦的な攻略法を考えることは、試合において重要である。また、自分がそのように攻められたときには、どういう対処の仕方や、身体的欠点を補う練習があるかという逆の立場からの考察もしておかなければならない。

2008年11月21日金曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・46

終盤戦(どちらかが3ゲーム取った後)に観察する点
相手のタイプによる終盤での作戦の具体例

 最後に、観察したデータを元にした、終盤での戦い方の具体例を紹介する。ただし、これらはほんの一例であり、まだまだいろいろな戦い方がある。人に教わるのも必要だが、実践の中で自分たちが見つけていく姿勢も大切にすべきだ。以下に示した4項目は、左側が一般的に多く見られる相手の特徴で、右側がそれに対応した戦術である。
 1.バックのレシーブは引っ張るコースが多い・・・・・・どんどんポーチに出る
 2.前衛のサービスが苦手・・・・・・ファースト・サービスでもライジングで打つ
 3.クロスのレシーブが得意・・・・・・ゲーム・ポイントでポーチに出る
 4.バック・ハンドが苦手・・・・・・バック側にツイストし、浮いた球をたたく

2008年11月20日木曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・45

終盤戦(どちらかが3ゲーム取った後)に観察する点
こちらに向かって必要以上に過剰にガッツ・ポーズをするかどうか

観察するポイント
 1ポイントごとに、いちいち派手なガッツ・ポーズをしたり、こちらを威圧するようなガッツ・ポーズをするのは、それによって必死に自分を支えているのであり、精神的にかなり追い詰められている証拠である。だから少しショックを与えれば、ガタッと崩れる可能性がある。同じガッツ・ポーズでも、ぐっと自分に向かってやるタイプは、精神的によい状態と言える。

その他
 相手が精神的に追い込まれているのだから、こちらは余裕を持って試合を進めればよい。

2008年11月19日水曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・44

終盤戦(どちらかが3ゲーム取った後)に観察する点
ポイントとポイントの間合い

観察するポイント
 序盤の頃の間合いと比べてどうなったかを見る。緊張してきたり浮き足立ってきたりした時は、どうしても間合いは短くなってくるものだから、ここでも相手の心理状態を知ることができる。

序盤では
 当然、比較のために序盤での相手の平常時の間合いを見て、覚えておかなければならない。

2008年11月18日火曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・43

終盤戦(どちらかが3ゲーム取った後)に観察する点
パートナーのミスへの対応

観察するポイント
 大詰めに近づいてきたところで、パートナーがミスしたときにどんな反応を示すのか見れば、相手ペアの精神的なつながりの太さや、信頼関係が分かってくる。それによって、崩れかけたペアなのか、まだまだ反撃してきそうなペアなのかも見えてくる。

口先だけの「ドンマイ」で冷たい対応
 信頼関係がかなり崩れてきているので、ミスした方をさらに攻めて、やる気をなくさせる。

やさしく「ドンマイ」と言うが内心はクサっている
 このタイプの見分け方は、パートナーを慰めた後の行動や、次のショットを見ればよい。ミスしたパートナーには優しく「ドンマイ」と言っても、内心はがっかりしている選手の本音は、その後の行動やショットに表れるので、そこをよく見ておく。元気がなかったり下を向いたり、次のプレイが雑だったりしたら、相手ペアを精神的にもう一息で崩すチャンスと言える。

パートナーの分を自分がカバーしようとする
 最もやりにくい相手で、なかなか崩れないタイプ。攻め方としては、カバーしようとする方に無理をさせて、一人相撲を取らせるという手がある。カバーしようとする選手の方にわざと決めるのも効果がある。

2008年11月17日月曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・42

終盤戦(どちらかが3ゲーム取った後)に観察する点

 終盤は、これまで観察によって集めてきたデータを元に、具体的な行動を起こしていく時間帯である。3ページの表1の流れのように、観察した結果を分析し、具体的な作戦として応用する。
 ただし、観察が全く必要ないわけではない。終盤では、相手が現在どんな精神状態にあるのかを見ることが大切になるのだ。相手が精神的に追い込まれているのか、まだまだ冷静なのかを知ることで、次の作戦の選択に役立てることができる。特に、相手が苦しいことが分かると、自分たちは逆に精神的に楽になるものなので、自分に対する心理的効果も大きい(ただし油断は禁物)。
 また、終盤になってもきちんとした観察ができるかどうかは、自分が落ち着けているかどうかのバロメーターにもなる。そのためにも、よく観察する必要があると言えるだろう。
 兵法にある「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」と言うのは、ソフトテニスの試合にもそのまま当てはまる。観察能力を磨き、相手に対する冷静な目をそのまま自分自身に向ければ、己を知ることもうまくなってくるのである。

2008年11月16日日曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・41

中盤戦(どちらかが3ゲームを取るまで)に観察する点
プレッシャーがかかると燃える選手乗せてしまうと恐い相手への対処

 プレッシャーがかかるほど燃えて力を発揮したり、緊迫した局面での緊張感を楽しんでいるタイプ、あるいは精神的に乗せてしまうと手がつけられなくなるタイプは、メンタル面で非常に恐い相手だ。ミスは多くても強力な武器を持っている選手にこういうタイプが多いため、その武器でポイントを稼がせないように注意しなければならない。また、中盤からの早めの仕掛けで、相手が本領を発揮しないうちにリードしておくのが大切で、できるだけ淡々と試合を進め淡々と終わらせるようにする。万が一にも相手を乗せてしまったら崩すのは難しく、早い/遅い、高い/低い、遠い/近い、長い/短い等、正反対のボールを交互に組み合わせて、相手のリズムを崩していくしかない。

2008年11月15日土曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・40

中盤戦(どちらかが3ゲームを取るまで)に観察する点
ゲーム・ポイントでのプレイ選択

観察するポイント
 大事な場面での精神的な強さを見ることができる。

ミス待ちをするタイプ
 ポイントでこちらのミスを待つようなプレイをしてきたら、精神的にはあまり強くないと見て良い。このような相手には、最後まで自分たちのプレイをしっかりやることに集中すればよい。

120%のプレイをするタイプ
 普段よりも良いプレイをしてくるような相手は、精神的にも強く、乗せると恐いので要注意。ファイナルゲームなどに持ち込むと不利なので、早い段階から仕掛けてリードしておく。

2008年11月14日金曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・39

中盤戦(どちらかが3ゲームを取るまで)に観察する点
ポーチを決められた次のレシーブのときの対処

観察するポイント
 こちらがポーチを決めた後、決められた相手が次にどのようなレシーブをしてくるかで、その相手の心理状態を見ることができる。

ロビング
 ポーチされた精神的ショックが大きく、ビビッて逃げに入っている。このタイプなら、試合の終盤で同じ局面になったときにも、ロブを上げてくることが予想できる。

入れに来たクロス・レシーブ
 これもポーチを嫌がって、弱気になっているタイプ。続けてポーチに出て成功すれば、崩すことができる。

しっかり打ったクロス・レシーブ
 大崩れしないタイプ。単純なポーチだけでは崩せないので、フェイントなど他の手段も使ってリズムを崩す。

ストレート・アタック
 超強気か、超弱気。セオリーがあまり通用しない。終盤で同じ局面になったときは、フェイントを使ってストレートに誘うと良い。

2008年11月13日木曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・38

中盤戦(どちらかが3ゲームを取るまで)に観察する点
レシーブミスの次のポイントでのもう1人のレシーブの対処

観察するポイント
 ソフトテニスの試合では、2ポイント連取するのが勝つために重要なことだが、それをしやすいかどうかを見る。

簡単にレシーブ・ミスを続ける
 精神的にはあまり強くなく、プレイに波があるタイプのペアだと考えられる。このような相手は、精神的に乗せなければ、それほど恐くない。

しっかりとレシーブを返球できる
 パートナーが簡単にレシーブ・ミスをした後でも、しっかりと良いレシーブを打てる相手は、メンタル面でも強く、2ポイント連取は楽ではない。何か違った仕掛け、たとえば
 (1) いつもより長く間を取る
 (2) プレイのリズムを変える
 (3) ボールのスピードを変える
などの方法で崩していく必要がある。

2008年11月12日水曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・37

中盤戦(どちらかが3ゲームを取るまで)に観察する点
急造ペアか、ベテラン・ペアか

観察するポイント
 特に団体戦では急造のペアも多いので、2人のコンビネーションや、お互いの理解度がどれだけ深いかを見る。見方は、
 (1) 2人のどちらでも取れる所にボールを集める。
 (2) 2人の会話から判断する
などがある。試合中に「こういう場面ではこうしよう」などと長々と打ち合わせをしているときは、コンビネーションがうまくいっていない場合が多い。また、打ち合わせの時間が短く、以心伝心でお互いのやろうとしていることが分かるペアは要注意。

急造ペアの場合
 いわゆるセンター・セオリーで、2人の間にボールを集め、コンビネーションの乱れを誘う。

ベテラン・ペアの場合
 コンビネーションを発揮させないように、1人に集中的にボールを集める。そうすると、ボールを打てない方が、焦って乱れることがある。

2008年11月11日火曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・36

中盤戦(どちらかが3ゲームを取るまで)に観察する点
相手ペアの司令塔はどちらか

観察するポイント
 2人のレベル差がそれほどない相手でも、どちらか一方が試合の主導権を握っていることが多いので、それがどちらであるかを見極める。
 (1) 2人の会話の言葉づかい
 (2) 話しているときのリーダーシップ
 (3) 多彩な攻撃を仕掛けてくる方の選手
 (4) ミスをしたときの対応の仕方
以上のような観点がある。

短期決戦では
 相手の方が実力で勝っているときには、試合が長引くと不利なので、リーダーを崩して一気に勝負をつける。そのため、リーダーの方のサービスの時に勝負をかけたり、ポーチに出たりして、リーダーを重点的に攻める。また、もう1人の方にボールを集めておいてチャンス・ボールを作り、決め球をリーダーの方に打つというのも非常に効果が高い。

長期戦では
 リーダーではない方を、時間をかけてじわじわと崩す。

2008年11月10日月曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・35

中盤戦(どちらかが3ゲームを取るまで)に観察する点
ポーチのフェイントへの対応・どこまで前衛の動きが見えているか

観察するポイント
 フェイントへの対応の仕方によって、ボールを打つ直前までボールと相手の両方を見ていられるかどうか、というレシーバーの能力を試す。それによってポーチに出やすいかどうかが分かる。上級者ほどこの能力が高く、安易にポーチに出ると、それを察知してストレートに打たれてしまう。

見えていない相手の場合
 フェイントにあまり反応できない相手の場合、ほとんどボールしか見えていないので、ポーチに出やすい。また、ポーチでのスタートのタイミングを早くできる。

見えている相手の場合
 フェイントにすかさず反応できる相手に対しては、それほど多くポーチに出ることはできない。出るとすれば、終盤にフェイントなしでいきなり出る。またはフェイントをかけて、自分の方に打たせる。

2008年11月9日日曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・34

中盤戦(どちらかが3ゲームを取るまで)に観察する点

 中盤は、変化への対応を見る時間ということで、序盤戦では相手に自由にやらせておいたのに対し、少しずつ小さな仕掛けを試みて、それにどんな反応を示すか観察するのが中心になる。駆け引きの要素も入ってくるので、序盤戦での観察よりも難しくなるが、ここでよく見ることができるかどうかが、勝敗にもかなり影響してくる。
 また、そうした駆け引きの部分は、難しさもあるが、最も面白い部分でもある。このあたりを楽しめるようになってくれば、観察力もかなり向上してくるだろう。
 観察するべき内容も、技術的なことから、徐々にコンビネーション的な要素や、メンタルな要素の方に移ってくる。また、序盤戦で見た技術的な情報を元に、どんな戦術が有効になるか、少しずつ試してみて、終盤での戦い方を決めるデータにするのも良い。
 もちろん中盤戦でも、相手にリードされている場合にはのんびりと観察する余裕はないので、相手の反応を見ながら、流れを自分たちの方に引き戻すために、戦い方を変えていかなくてはならない。

2008年11月8日土曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・33

序盤戦(最初の2ゲーム)に観察する点
あがり性、緊張しやすいタイプかどうか

観察するポイント
 序盤でも分かるメンタル面の観察ポイント。プレイが固い、口数が少ない、ボールが手につかない、動きがせわしなくあわただしい、などの要素が見られたら、あがり性タイプと見て良い。そういうタイプなら、接戦に持ち込むと自滅してくれることがあるので、形勢が不利でも、なんとか最悪でもファイナルゲームを目指した試合運びをする。

攻め方
 緊張しやすいタイプだと分かれば、序盤戦から緩いボールを送ったりして、テンポをつかませない。ミスをしたらすかさず同じボールを打たせる。

2008年11月7日金曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・32

序盤戦(最初の2ゲーム)に観察する点
ストレート攻撃をしてくるペアかどうか

観察するポイントと対処
 ソフトテニスではストレート攻撃は非常に重要なものであり、それがうまい相手かどうかで、戦い方も変わってくる。だから、ストレートを攻撃してくるかどうかは、序盤戦でチェックしておきたい。ストレート攻撃の仕方については、次の3つのタイプが考えられる。
1.してこない
 攻撃バリエーションが少なく、短い距離・速い展開の攻めが得意ではない。
2.攻撃はある
 注意して押さえなければならないコースが増える
3.守りを考えたうえで攻撃してくる
 ボールを打たない方の選手が、ストレート攻撃が一発で決まらなかった場合の返球コースをふさぎに動く。かなり高度なコンビネーションを持った手強いペアといえる。こういう相手には不用意にサイド寄りのボールを送るとストレートを攻められるので、なるべくセンターにボールを集める。

2008年11月6日木曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・31

序盤戦(最初の2ゲーム)に観察する点
相手が平行陣か、雁行陣か

攻め方
相手が平行陣なら
 (1) 短いボールを打つ
 (2) 前に出てきたら足元を攻めてロー・ボレーやハーフ・ボレーをさせる。
 (3) 後ろにいるときはツイストなどを使い、低い打点で打たせる。
相手が雁行陣なら
 (1) ロブなどで陣形を崩す
 (2) 下がらせることができたら、遅くてもいいから深いボールを打つ。

後衛には低いボールを打たせる
 後衛は、ロー・ボレーやハーフ・ボレーでラケット・ヘッドが下がりやすい傾向があり、甘い返球が来やすい。相手が後ろにいるときも、低くて浅いボールで前に出させてしまえばよい。

前衛には遅くても深いボールを送る
 前衛は、遅いボールをストロークで強打するのが苦手な人が多い。したがって、緩いボールでも深くさえあれば、攻撃される危険は少ないし、相手が力んでミスをしてくれればラッキーだ。そのため、自分のボールに切れがなくても十分に戦える。逆に速いボールを送った方が、うまく面を合わせられて、かえって攻撃的なボールを打たれることも多い。


2008年11月5日水曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・30

序盤戦(最初の2ゲーム)に観察する点
ボールの通り道を覚えておく

観察するポイント
 勝負どころでポーチに出るときのデータとするために大切。フェイントなどをかけずに、相手に自由に返球させて、ボールがネットを通過する時にどのあたりを通るか確認しておく(スピードやタイミング、コース、高さ、球種など)。

ポーチのポイント
 ポーチでは、確認しておいたボールの通り道に向かって迷わず自動的に出ていく。ただし、フォアかバックか決めつけて、初めからどちらかに構えながら出ると、ほんの少しでも逆をつかれた時に対応できなくなるので、どちらでも打てる構えで出ていくのが大切。

2008年11月4日火曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・29

序盤戦(最初の2ゲーム)に観察する点
相手にとってのチャンス・ボールの時のボールを打たない選手の動き

観察するポイント
 序盤で相手にチャンス・ボールを与えてしまったときは、一度は拾うのをほぼあきらめて、ボールを打たない方の選手の動きを見ておくと良い。ボールを打たない方の選手が、もし返球された場合に備えて、最適なポジションに動こうとするようなペアは、かなり試合経験が豊富と見るべきで、厳しい返球が要求される。逆に、ボーッとパートナーが決めるのを見ているようなら、返しておけばなんとかなる可能性もある。

2008年11月3日月曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・28

序盤戦(最初の2ゲーム)に観察する点
レシーバーがサービスを待っているときのスタンス

観察するポイント
 フォアのスタンスかバックのスタンスか、どちらで構えているかで、バックが苦手かどうかある程度わかる。人によって異なるが、相手のレベルが高い場合はフォアとバックのどちらでも対応できるスタンスで構え、レベルが低い場合はフォアの構えで待つ傾向がある。また、攻撃的な性格の選手は得意な方で構え、守備的な性格の選手は苦手な方で構えるという傾向もある。

誰が観察するか
 サーバーはサーブに集中しているため、そこまで見る余裕はない。これを見るのはパートナーの役目で、それをサーバーに教えてあげなくてはならない。

攻め方
 ポイントを積み重ねるためには、常識的には苦手なサイドを攻める。だが勝負どころでは、得意な方を攻めるという手もある。一般的に「得意なツボの近くには穴がある」とよく言われるが、急に得意な方で打たせると、慢心によるミスや、力みを誘うことができる。また、フォアのレシーブが得意でフォアに回り込みたがっている相手には、ときどきフォア側に遠いサーブを打つと効果的である。

2008年11月2日日曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・27

序盤戦(最初の2ゲーム)に観察する点
サーバーの立つ位置、サービスのトスの位置

観察するポイント
 立つ位置によって、センターを攻めようとしているか、サイドに追い出そうとしているか、ある程度わかる。特に最初のサービス・ゲームで1本目の時に立った位置をよく覚えておく。それが、その選手の標準的な位置と考えられるからだ。
 トスの位置からは、球種の特徴を知ることができる。一般的に、いつも頭の後ろにトスが上がる選手はリバース系のサーブが中心になるし、身体の左側に上がる選手はフラット系あるいはスライス系と考えられる。また、トスの位置が安定しない選手はサーブの安定性も悪い。

2008年11月1日土曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・26

序盤戦(最初の2ゲーム)に観察する点

 先に説明したように、データ収集の時間帯である序盤戦で見ておくべきことは非常に多い。この時点では、やはり技術的な要素が中心になるが、コンビネーションやメンタル面も少しずつ見ていくことになる。
 また、試合が始まって、緊張感が高まったり精神的なプレッシャーがかかってきた時に、ウォーミング・アップの時と同じように打てるかどうかというのも、ひとつの観察ポイントと言える。あるいは、試合が始まるとウォーミング・アップの時よりも本気でサーブを打ってくるようになる選手もいるので、試合前に見ていた部分を継続して見る必要もある。
 しかし、大舞台での経験が少ない選手は、試合が始まると自分自身の余裕がなくなってしまい、観察どころではないという状況に陥るときもあるだろう。だが、観察しようとすることで、逆に落ちつきを取り戻すことができる場合もある。試合慣れしていない人が舞い上がってしまうときは、余計なことを考えていたり、意味のない不安を抱えていたりすることが多いので、観察に意識を傾ければ、かえって雑念が消え、集中できることが多いわけだ。試合が始まったら、あまり自分自身のことは考えない方がよい。

2008年10月31日金曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・25

技術的な特徴からみたミスや弱点の傾向
サービス

トスと一緒に膝も伸び上がる・・・・・・ネットしやすい
打点が低い・・・・・・ネットしやすい
グリップが薄すぎる・・・・・・ネット(当たりがかすれやすい)
グリップが厚すぎる・・・・・・オーバー(回転がかかりにくい)
びびって置きにきたスピン・サーブ・・・・・・オーバーしやすい
テイクバックからフォロースルーの小さいスウィング・・・・・・打ち頃のボールが来やすい

 サービスでは、先に説明したように、のびのびと滑らかに振り切れているかどうかというのが、やはり重要な見るべきポイントとなる。サービスは精神的な影響を非常に受けやすいショットなので、スウィングに無理や不安のある人ほど、緊張感が高まってきたときに振り切れなくなってくる。そうすると、威力が落ちるだけでなく、回転のかかりも悪くなり、ますます崩れていきやすいわけである。また、打点が十分に高くとれているかどうか、無駄な動きや無理な動作がないかどうかという点も良く見ておくべきだ。

 膝は、トスを上げるとともに曲げていくのが普通だが、ときどきトスを上げる動作につられて伸び上がってしまう選手がいる。そういうクセのある選手は、タメが利かないので、サーブに威力がなく安定性にも欠けると思って良いだろう。

2008年10月30日木曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・24

技術的な特徴からみたミスや弱点の傾向
スマッシュ

正面を向いて打つ・・・・・・クロスにしか飛ばない
打点が頭の後ろになっている・・・・・・バック・アウトしやすい
足が止まって腰が引ける・・・・・・ネット・ミスしやすい
リストを使いすぎる・・・・・・ネット・ミスしやすい
腕の回内ができない・・・・・・威力がない
フォロースルーと一緒に左手が身体の左側に流れる・・・・・・威力のあるボールが打てない

 スマッシュの技術で最も大切な見るべきポイントは、きちんと落下点に入れているかどうかということだ。厳しいロブでもないのに、打点が頭の後ろになっていたり、腰が引けていたり、打点が低くなったりしているのは、打点をきちんと把握できずタイミングも正確につかめていない証拠である。上から来るボールに対する距離感というのは個人差が大きいので、この能力が優れているかどうかでスマッシュが好きか嫌いか分かれてくる。また、正面を向いたまま下がったり打ったりするのも、自信のなさのあらわれと言える。

 深いロブでもないのに打点が頭の後ろになるクセのある選手は、ボールを押さえ込むことができずにバック・アウトする確率が高い。スマッシュできないほどの厳しいロブを打たなくても、少し下がりながら打たせるようなロブさえ上げれば、それほど恐くはない。また、手首の使い方が極端な選手は、スウィングが小さくなりやすく、引っかけてネット・ミスしやすい。ときにはわざと浅めのロブを上げてみると、ミスを誘える可能性もある。

2008年10月29日水曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・23

技術的な特徴からみたミスや弱点の傾向
ボレー

スタンスの狭いボレー・・・・・・ネット・ミスしやすい
テイクバックが大きい・・・・・・バック・アウトしやすい
ラケット・ヘッドが下がる・・・・・・ネット・ミスしやすい
ラケットをフォア側に構えてボールを待つ・・・・・・バック・ボレーに自信がない
構えているときから力んでいる・・・・・・スウィート・スポットを外しやすい

 ボレーでまず見るのは、ボール・スピードの変化への対応(フットワーク)や、ボールと身体との距離感だが、それ以外にも見ておくべき点をここに示した。中でも大切なのに見落としがちなのが、レディ・ポジション(待球位置)である。1球打つたびにきちんとレディ・ポジションに戻れているかどうか、どんなボールにも反応できるようなリラックスした構え方ができているかどうかを、よく見ておかなければならない。また、肩や腕の筋肉に緊張が見られる場合、力が入っている証拠と言える。

2008年10月28日火曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・22

技術的な特徴からみたミスや弱点の傾向
グラウンド・ストローク

打点が後ろ気味・・・・・・クロスが弱い
 フォアでもバックでも、打点が後ろ気味の選手は、クロス打ちが苦手な場合が多い。試合中に一度クロス方向を空けてみて、それでもクロスに打ってこないようなら、その後は思い切りストレートに的を絞って良いだろう。
テイクバックが小さい・・・・・・強いボールが打てない(但しコントロールは良い)
テイクバックが高い・・・・・・流し打ち気味のボールが多い
テイクバックが低い・・・・・・引っ張るボールが多い
踏み込んだ脚の膝が伸びている・・・・・・ネット・ミスをしやすい
 踏み込んだ脚の膝が伸びていると、重心が高くなり、下から上のスウィングができにくいので、ネット・ミスをしやすい。膝が柔らかく使えているかどうか、きちんと身体を回転させて打てているかどうかというのも、よく見ておきたい点だ。
テイクバックで面が上を向いている・・・・・・アウトのミスをしやすい
 テイクバックで面が上を向いている選手は、インパクトでの面も上向きになりやすく、アウト・ミスをしやすい傾向がある。
脇が開いてボールを巻き込むようなスウィング・・・・・・ネット・ミスしやすい
打点が身体に近い・・・・・・サイド・アウト(逆クロス方向)しやすい
 初級者・中級者の中には、いつも打点が身体に近くなっている選手もいる。そういう選手はサイド・スピンがかかって逆クロスに切れるミスが多い傾向がある。また、スウィング自体が、きちんとインサイド・アウトになっているかどうか、巻き込むようなスウィングや、腹切りスウィングになっていないかどうかという点もチェックする

 先に説明したように、グラウンド・ストロークがうまいかどうかは、まず最後まで振り抜いているかどうかで判断できる。そして次に大切なポイントは打点である。打点の取り方が打つたびにバラバラだと、ボールとの距離感が悪く、ミスが多いと予想できる。また、打点が後ろだったり、身体に近かったりすると、上で示したようなクセが出やすい。テイクバックが小さい選手は、自分からは強打しにくいが、ライジング打ちはうまく、コントロールも良いので、速いボールで攻めるよりも遅いボールで揺さぶる方が効果的だ。また、ここで言うテイクバックの高さとは、上から引くか下から引くかということではなく、フォワード・スウィング開始時の高さのことである。

2008年10月27日月曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・21

技術的な特徴からみたミスや弱点の傾向

 ウォーミング・アップから序盤戦にかけて、相手の基本技術をよく見ておけば、どのようなミスをしやすいか、どこを攻めればショットが乱れるかを知ることができ、中盤以降の戦いをかなり有利に進められる。そのために、ここではショット別に選手の技術的な特徴やクセと、そこから発生しやすい弱点やミスの傾向を、具体的にまとめてみた。
 どのショットにも共通して大切なのは、いつも打点にきちんと入れているかどうか、つまりボールと身体の距離感がしっかりしているかどうかを見ることである。見落とされがちな要素だが、この能力によって試合でのミスの数が大きく違ってくるので、よく見ておかなければならない。
 初めは細かい所まで観察する余裕はないだろうが、ちょっとしたクセをひとつでも発見し、試合の終盤になってもそれを忘れずに戦略に生かせるようになったら、かなり自分の観察力が上がったと考えて良いだろう。

2008年10月26日日曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・20

スマッシュ
得意コースはどこか

観察するポイント
 最初(1球目)に打ったボールのコースと球種を覚えておく。スマッシュは、苦手な選手が多いショットだから、最初は得意なボールから打ってきやすい。つまり、ゲームで大事な場面になるほど最初に打ったコースに来る可能性が高いので、そのコースを覚えていればいちかばちか大胆に動くことができる。もしそれが成功したら、相手に与えるダメージは非常に大きい。

その他
 スマッシュが好きかどうかは、必ず見ておく。ウォーム・アップで自信なさそうに打っていたり、打点や当たりが安定していない選手は、苦しくなったらロブでかわせる可能性が高い。

2008年10月25日土曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・19

サービス
滑らかなスウィングができているかどうか

観察するポイント
 スピードや回転よりも、まずスウィングが滑らかかどうかを見る。無理のない滑らかなスウィングで安定して振り切れている選手は、サーブが崩れる可能性は低い。だが、ボールは速くても動きに無理がある相手は、長続きしないと見て良い。
 上級者の強力なサーブを意識して膝を極端に深く曲げたり、ボールの回転を意識してトスがかなり頭の後ろに上がっていたりして、無理なスウィングになっている選手が意外に多いが、そういう選手のサーブは終盤で崩れやすい。むしろスピードはそれほどなくても、滑らかに振り切るスウィングをしている選手の方が要注意だ。

その他
 何種類のサーブを持っているか見ておく。回転のかけ具合をきちんと調節できるか、左右にワイドに打ち分けることができるかどうかもチェックしておきたい。

2008年10月24日金曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・18

ボレー
ボール・スピードの変化に対応できるかどうか

観察するポイント
 速いボールと遅いボールを混ぜながら打たせる。そして速いボールに対する反応や面の作り方、遅いボールに対するフットワークを見る。どんなスピードに対しても同じように足が動いて打つ選手は、ボレーがうまいと見るべきだ。

遅いボールに対するフットワークを観察する
 遅いボールに対しても、よく足が動いて打てる選手は、チャンスボールはしっかり前に詰めて決められるし、スピードの変化による揺さぶりにも強いので要注意。逆にフットワークがボールのスピードによって変わる人は、リズムを変えるとミスを誘いやすい。

その他
 ボールと身体との距離感を見る。高い・低い・遠い・近いと、どんなボールに対しても、顔とラケットの間隔があまり変わらずに打てる選手は、動きも良く、ミスが少ないと考えるべきだ。ボールに切れがあるかどうかよりも、そうしたことの方が、試合では重要になる。

2008年10月23日木曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・17

グラウンド・ストローク
フォアとバックのどちらが得意か

観察するポイント
 ある程度ウォーミング・アップができたら、相手の身体の正面にボールを集める。そうすると、バックが苦手な選手はフォアに回り込む傾向が出るので、バックが得意そうかどうか見ておく。それによってゲームでの攻め方を考える。

最後まで振り切っているかどうか
 グラウンドストロークがうまいかどうかを知るには、つねに最後まできちんと振り抜きながら、安定したボールが打てているかどうかを見る。ボールの威力はあまり問題ではない。いつも振り切って打てる選手は、打点も安定していて、揺さぶりにも強く、大事な場面でも自信を持って打ってくるので要注意。

その他
 いろいろな打ち方をさせてみる。トップ打ちが得意かどうか。短いボールもうまく処理できるかどうか。ボールのスピードの変化にも対応できるかどうか。また、ストロークがうまいかどうかは、つねに最後まで振り切れているかどうかを見る。

2008年10月22日水曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・16

ウォーミング・アップの間に観察する点

 ウォーミング・アップの時には、メンタル面やコンビネーションを観察することはあまりできないが、相手の基本技術はかなり観察することができる。したがって、ここでは観察のポイントを技術に絞り、相手のクセを見抜くことを意識するべきだろう。
 その時に注意しなければならないのは、あまり相手が打ったボールに気を取られないということだ。ボールに威力があっても、ミスを誘うことさえできれば恐くはないので、そのこと自体で「やばい」と感じる必要はない。あくまで相手の動きやスウィングを冷静に見て判断したほうが、正確にクセや弱点を見抜くことができるはずだ。
 さらに細かい技術的な観察ポイントについては、後ほど述べる。

2008年10月21日火曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・15

より良い観察のためのコツ

3.失敗した次や、ゲームの節目の行動をよく見る
 流れが変わりやすい場面では、その人の地の部分、本音の部分が出やすいので、それを見逃さない

2008年10月20日月曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・14

より良い観察のためのコツ

2.ちょっとした違いを見逃さない
 少しでも「えっ」と思ったこと、「へーっ」と思ったことを忘れないように心がけていれば、すぐには役に立たなくても、他のこととの比較で新たな発見をすることもあり、観察力も自然に向上していく

2008年10月19日日曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・13

より良い観察のためのコツ

1.始めは相手に自由にプレイさせる
 好きなようにプレイをさせることで、相手の手の内をすべて出させてしまえば、後で作戦が立てやすい
●終盤までに相手の手の内をすべて出させてしまう
 序盤では、こちらからどんどん仕掛けるというよりも、相手に好きなようにプレイさせ、手の内をすべて出させて、じっくりと観察するように心がける。そうすれば、終盤では自分たちのほうが有効な戦略を用意でき、かなり有利な戦いになる。

2008年10月18日土曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・12

時間の流れとともに、見えるもの・見なければならないものが変わる

 ここからは、さっそく良い観察のための具体的なポイントやコツを紹介していこう。まず、理解してほしいのは、時間帯によって、見えるもの、そして見ておくべきものが変わるということ。それは大きく分けると、次のようになる。
 1.ウォーミング・アップ(コートサイドの練習、試合前の乱打)
 2.序盤戦(第2ゲーム終了まで)
 3.中盤戦(どちらかが3ゲーム取るまで)
 4.終盤戦(どちらかが3ゲーム取った後)
 おおまかに言って、ウォーミング・アップから序盤戦はデータ収集の時間、中盤は変化への対応を見る時間、終盤は作戦実行の時間、と分けられるが、相手によっては、または試合の流れによっては、もっと早く終盤の対応をしなければならないこともある。観察のポイントとしては、技術的な側面、コンビネーション的な側面、メンタル的な側面があるが、どの面を重点的にみるかということも、この時間帯によって変わってくる。特に序盤戦までは、自分の調子のことばかり考えず、相手の観察に意識を注ぐべきだろう。

2008年10月17日金曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・11

5.応用

 原理を知って、それをさまざまな場面に利用する姿勢を持つ。「それなら、こうすればいい」「こうすれば、こうなるはずだ」 それによっていろいろな場面で使える知識となる

具体的な作戦を立てる
 「相手がこうきたら、こうしよう」「あの場所をこのように攻めてみよう」

2008年10月16日木曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・10

4.原理・原則

 分析や工夫から大まかな原理を知る。「そうだったのか」「こういう理由があったのか」と気づく、判断する

違うことにも当てはめてみる
 「ここでも言える」「あれの原理と似ている」「あれとは対照的だ」

2008年10月15日水曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・9

3.分析

 収集した情報を分析する。「どうして」「なぜそんな打ち方になるのか」

仕組みを探る
 発展させたり、変形したり、工夫と試行錯誤をしながら「こういうことかな?」「こうかもしれないぞ」と考える

2008年10月14日火曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・8

2.比較

 自分の知っていることと比較し、共通点や相違点を探す。「ここが同じ」「ここが違う」「あの人のクセと似ている」など、いろいろな観点から情報を吟味する

2008年10月13日月曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・7

1.観察

 情報を収集する。「あれっ」「おやおや」「変わったクセがあるぞ」と思うこと、未知のこと、あるいは今まで観たものに似ていることなどに出会うさらに、逆のことを試してみる、確認してみる

観察における態度はどうあるべきか
×悪い=能動的(自分を出す)
 先入観を持って見る、決めつける、自分の知っている枠組みにムリヤリ当てはめる
○良い=受動的(自分を出さない)
 自分の枠にはめないで、心を広くして、ありのままを見る

2008年10月12日日曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・6

表1

 試合の中で観察した知識・経験を元に作戦を立てるまでの過程は、以下のようになる。まず最初にしっかりとした「観察」によって情報収集ができてこそ、比較・分析によって原理を解明し、作戦を立てることが可能になる。逆にこのプロセスさえ身につければ、誰にも教わらなくても、自分なりの勝ち方・戦略を身につけることができるようになる。

2008年10月11日土曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・5

観察と余裕と集中力の微妙な関係

 ここまで読んで、「試合中に相手のことを観察する余裕なんてない」とか「技術が足りなくて作戦を立てる余裕がない」と感じる人もいるだろう。たしかに最初から、相手のフットワークの細かいクセまで見ることは不可能だし、そこに弱点を発見したからといって、即座にそこを攻撃できるというものではないだろう。
 しかし、観察にも初級から上級までレベルがあり、初級の人には初級の人なりの見方、その人の技術レベルなりの攻め方があるわけだ。だから無理せずできることから始めていけばよい。
 また、もうひとつ重要なのは、「余裕がないから観察できない」のではないということだ。逆に「観察することで余裕も生まれてくる」という面もある。観察と余裕は、そのように相互に影響を及ぼす関係なのである。
 集中力も同様で、集中していなければよい観察はできないが、しっかりと観察しようという姿勢があると、逆に集中力も高まる。よく観察しようとすることで、余計なことを考えず、試合の世界に入り込むことができるわけだ。そうして集中力が高まれば、当然のように余裕も生まれてくる。
 一番もったいないのは、まだ技術的に未熟だから、練習不足だからといって、また、何回やっても負けるからといって、試合を、特に強い相手との試合を敬遠してしまうことだ。そのような考え方だと、いつまでたっても納得のいく試合ができるようにはならないし、試合を楽しめるようにもならない。繰り返すが、試合をしながら、楽しみながら強くなるという姿勢を大切にするべきだ。

2008年10月10日金曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・4

すべては「観察」から始まる

 このような姿勢で試合に臨み、勝ち方を学ぼうとするとき、まず最初にやるべきこととして大切なのが「観察」という行為である。対戦相手を観察するだけでなく、自分のパートナーや自分自身、そして周りの環境など、試合に関係するあらゆるものを五感を使って観察するのだ。そして観察によって得たデータや新たな発見から、表1で説明しているような過程で作戦の立て方を考え、勝ち方を覚えていくのである。
 また、初めての相手と戦うときは、お互いに相手のクセも知らず、対等な立場である。ソフトテニスには、野球での満塁ホームランのようなショットがなく、1ポイント1ポイントの積み重ねしかないので、自分の出す一手がどれだけ相手よりも優位な一手になっていくかということが問題になる。だから、自分の持っている技術を効果的に出し、同じ1球をより有効に使えるようにするためには、観察によってどれだけ有効な情報を得るかということにかかってくる。
 だから、観察力が足りなければ、それだけ勝ち方を覚えるのも遅くなるのだ。以下には、こうした考え方から、「観察」上手になるための具体的なノウハウを述べていく。

2008年10月9日木曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・3

「価値観」次第で楽しみながら強くなれる

 たしかに技術が上達するとうれしいし、打ちやすいボールを送ってくれる相手とテンポ良く打ち合うのも楽しい。しかし、それだけで満足してしまい、試合の中での戦術や駆け引きを楽しむ余裕をなくしてしまってはいないだろうか。人間相手のゲームとしてのソフトテニスを楽しむ心の余裕があれば、さらにソフトテニスの世界は広がり、成熟した楽しみ方ができるようになるはずだ。
 そうなると、当然ながら試合をするのがとても楽しくなってくる。そして、次の作戦を考えたり、相手の弱点を探したりすることが楽しくなってくる。勝負に負けても、そこから何かを学ぶことができる。また、「あ、こうすれば強い人からもポイントが取れるのか」といった新しい発見をし、それが大きな楽しみにもなる。
 こうした過程の積み重ねで、楽しみながら自然に「勝ち方」をいくつも覚えてくる。気がつくと自分はいつの間にか試合に強くなっていて、ますますソフトテニスが楽しくなる。そういう良循環ができるのだ。思議に試合に強いという人の秘密は、まさにここにある。練習や試合での「価値観」をどこにおくか。もっと試合に強くなりたいと思っている人は、その点をもう一度振り返ってみてほしい。

2008年10月8日水曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・2

君は本当にソフトテニスを楽しめているか

 一緒に練習していると、技術的には自分と大きな差がないように感じるのに、試合をすると、なぜかいつも完敗してしまう。そういう相手が、君の身の回りにもいるのではないだろうか。もし君のソフトテニス歴が浅かったら、その人の存在はとても不思議に感じられるはずだ。
 そうした実戦に強い人たちと、そうでない人たちとの違いはどこにあるのだろうか。それは単純に言えば、試合に強い人は、勝ち方を他の人よりもよく知っているということに尽きる。問題なのは、彼らがどうやって勝ち方を覚えたかである。
 それは、誰かに教わったのではなく、ほとんどが自分の経験の中で、考え、試行錯誤しながら身につけたものだと言っていいだろう。彼らは、勝つためにはどうすれば良いか考え、工夫する。そうしたことを楽しみながらやっているのだ。
 これを読んでいる君は、今一度自分のソフトテニスの楽しみ方を分析してほしい。無意識のうちに、美しいフォームや威力のあるボールを身につけることばかり考えてはいないだろうか。試合でも「次はどう打ったら良いボールが返るか」ということを考えてはいないだろうか。もしそうだとしたら、君はソフトテニスの楽しみのごく一部しか味わっていないことになる。

2008年10月7日火曜日

試合に強くなるために試合を観察する方法・1

 一見、技術的なレベルでは自分と変わらないように見えるのに、なぜか試合になると断然強いという人がいる。その秘密を理解するためには、まず相手を観察することから始めなければならない。なぜ「観察」すると試合に強くなれるのか、そして相手のどこを観察すれば効果的な戦略を立られるのか、試合に強くなるための観察力の向上法を徹底的に解説する。

2008年10月6日月曜日

トーナメントで勝つために・12

大事なポイントでは、今までと違ったボールを打つこと

 たとえば2オールの2-2で、今まで打っていなかったストレートに思い切りレシーブを打てる選手は、試合で強い選手である。こうした大事な場面では「今まで成功してきたことをやろう」と考える人と、「今までと違ったことをやろう」と考える人の2通りあるが、後者の方が強い。もちろん性格的なこともあるが、ここ1本というとき今までと違った方向に打つには、相当な技術も必要。大事な場面でのスペシャルショットも、普段から練習しておくべきだ。

2008年10月5日日曜日

トーナメントで勝つために・11

試合が競ったときには、次の1本のことだけを考えてプレーすること

 試合が競ってくると、いろんなことを考えがちだ。精神的には「勝ちたい、負けたくない」と思うほど力んでくるし、また「相手の苦手なところを攻めよう」として無理なプレーに走ってしまうこともある。そんな競った状況で楽にプレーする秘訣は、「次の1本」のことだけを考えることだ。プレッシャーがかかるような状況では特に、あれこれ考えず、たとえば「レシーブはセンターを狙う」と決めたら、それだけを頭に置いてプレーするとよい。

2008年10月4日土曜日

トーナメントで勝つために・10

格下の相手に取りこぼさないためには、自分たちのミスを減らすこと

  自分たちよりレベルが下の相手と当たったときには、いろんな勝ち方があるが、最も取りこぼしが少ないのは、「自分たちのミスを減らす」勝ち方だ。レベルに差があるときにはすべての局面で平均値が上なのだから、無理をしないで1本余計につないでいけば、局面での差はさらに大きくなる。無理すれば1本で決まるところでも、もう1本つないで確実に決めるようにした方が、取りこぼしは少ない。

2008年10月3日金曜日

トーナメントで勝つために・9

レベルが近ければ、得意なプレーを徹底すること

 少しレベルが上の話になるが、一進一退の攻防となったら、相手の弱いところだけを攻めるのではなく、相手の得意なところで勝負するのもひとつの作戦だ。相手が得意なプレーや作戦を止めることが出来れば、一気に流れが来るものである。相手とのレベル差がある場合には違う戦い方があるが、レベルが近いときには「ここ一発」という勝負の場所が必ずある。それを自分たちのものにするのが、試合に勝つひとつのコツと言える。そのためにも、最初の2ゲームの戦い方は重要だ。

2008年10月2日木曜日

トーナメントで勝つために・8

もっと強い相手と当たったときは、普段通り自分のプレーをすること

 自分たちより明らかに強い相手と当たったとき、変に意識して自滅する選手も多い。「どうせ負ける」のなら、普段通り自分たちのプレーをやってみる方が、その後につながる。強い相手とやった方が精神的に楽だし、ラリーもいつもより続くので自分がうまくなったような気がするものだ。大事なのは、「相手が強いから」と意識せず、自分たちのプレーを崩さないこと。それでどこまで通用するか体感しよう。

2008年10月1日水曜日

トーナメントで勝つために・7

強い相手と当たったときには、より攻撃的なプレーを目指すこと

 ソフトテニスの試合は短いので、攻撃的に戦った方が有利である。一般的に、試合は強い相手のペースで進む。これは自分たちのプレーが徹底しやすいからである。そしていったん相手のペースにはまると、なかなか修正できない。「負けてもともと」と開き直って、自分たちのもっとも得意とするプレーでぶつかっていった方が、むしろいい結果がでるものだ。

2008年9月30日火曜日

トーナメントで勝つために・6

強い相手と当たったときは、トスに勝ったらレシーブを選択すること

 自分より強い相手に対して、いきなり4ゲーム連取することは考えにくい。いくら善戦しても、取ったり取られたりの試合になってくる。強い選手はたいていサーブも得意なので、リードを許した状況でサーブを打たせると、思い切ってエースを狙われたりして不利である。調子に乗る前に相手のサービスゲームを終わらせた方が、自分のペースで試合を組み立てやすい。

2008年9月29日月曜日

トーナメントで勝つために・5

大きく崩れないためには、お互いの調子を冷静に見る目を持つこと

 どんな試合でも「流れ」というものがある。この「流れ」をつかめるかどうかで、試合が決まってしまうことも多い。ペアの2人とも調子がいいというときは少なく、たいてい、どちらかがいいときはもう1人は悪いものだ。このような調子のアップ&ダウンを、冷静に見極める目を持つことが出来れば、一方的に崩れるということは少ない。相手に「流れ」が行っているときは、それまでの展開を捨てて、例えばずっとロビングを上げるなど、全く違うプレーをすることも、時には大切。

2008年9月28日日曜日

トーナメントで勝つために・4

序盤で大切なのは、相手の決めたコースを覚えておくこと

 序盤に相手のチャンスボールでポイントを失ったとき、相手がどのように攻めてきたかを覚えておくことが大事だ。たとえばポーチで決められたとき、スマッシュで決められたとき、相手はチャンスボールなら自分が得意なコースへ決めてくるはず。この「得意」としているコースを覚えておけば、中盤や終盤でそのコースだけをカバーし、相手に苦手な方へ打たせてミスさせたり、場合によっては後で述べるように「得意なコースを止める」ことも可能になる。

2008年9月27日土曜日

トーナメントで勝つために・3

どんな相手と当たっても、最初の2ゲームを必死になること

 高校の大会はほとんど7ゲームマッチ。瞬発力の勝負である。そこで大事なのが最初の2ゲーム。最初の2ゲームで1-1に、そして2-2に持っていけば、もう相手とのレベルの差なんて関係なくなる。だからとにかく最初の2ゲームを頑張ることが大切。また、負けたとしても、1-1から1-3になった場合と、0-2から1-3になった場合では、相手の本気度が違う。当然、相手を本気にさせた1-1からの敗戦の方が、後につながるはずだ。

2008年9月26日金曜日

トーナメントで勝つために・2

ドローを見たときに、名前負けしないこと

 勝てるだけの実力はあるはずなのに、「名前負け」してしまう選手がよくいる。相手がシードだとか相手の実績とかは、試合前は気にしないことが一番。「どうせトーナメントなんて一発勝負、やってみなければ分からない」と思えば、有名選手相手でも勝つチャンスが生まれる。

2008年9月25日木曜日

トーナメントで勝つために・1

 技術を向上させることも重要な要素だが、試合で勝つためには戦術・戦略・使えるテクニック等も重要になってくる。ここであげるのはそのための「キーワード」集である。試合の時に思い出してほしい。

2008年9月24日水曜日

フットワークのトレーニング・24

補足

 ここまでで、ひととおりのフットワーク・ドリルは終了である。最後に補足として、各ダッシュでのスタートの仕方のバリエーションに触れておこう。座った状態や、うつ伏せに寝た状態、仰向けに寝た状態など、いろいろな姿勢からスタートしてみるのも、なかなか効果的な方法である。身体を起こす際に、腕や腹筋、背筋なども使うことになるため、フットワークのドリルに、付加価値的な要素も加わる。それぞれのドリルの効果を高めるために、試してみると良い。

2008年9月23日火曜日

フットワークのトレーニング・23

⑤.ボール・キャッチ(20球×3~5セット)
 これは2人組で行うドリル。まず球出し役が、選手のどちらかにワンバウンドするボールを送り、選手はそれを追っていってキャッチする。すぐさま球出し役は反対のサイドにボールを送り、選手はターンしてそのボールを追って、キャッチするというドリル。連続して20球ほどやったら、1セットが終了。1~2分の休憩を挟んで、これを3~5セット行う。なお球出し役は、選手が慣れてきたら単調に両サイドに出すのではなく、フェイントで逆を突いたり、ボールの長短を変えたりして、アクセントをつけると良い。

2008年9月22日月曜日

フットワークのトレーニング・22

④.ライン・ダッシュ&スプリット・ステップ(片サイド3セット、計6セット)
 これもコートのラインを利用したドリルで、今度はラインに沿って各種のダッシュを行う。まずベースラインとサイドラインの交差点からスタートし、サイドラインに沿ってネットまでダッシュ。ネットにタッチしたら、今度は後ろ向きのダッシュで、サービスラインまで下がる。そこでスプリット・ステップし、次はサービスラインに沿ってセンターまでサイドステップで移動。そしてセンターライン沿いにネットまでダッシュする。ネット・タッチ後、後ろ向きのダッシュで再びサービスラインまで下がり、スプリット・ステップ。サービスライン沿いに、サイドステップでサイドラインまで移動し、またネットまでダッシュする。そしてネットタッチしたら、後ろ向きのダッシュでベースラインまで下がり、ゴールという手順。複雑に思うかもしれないが、前への移動はダッシュ、後ろへの移動は後ろ向きのダッシュ、横への移動はサイドステップで、常に身体はネットに向いている、と考えると覚えやすい。これが終わったら、1~2分の休憩後、今度は逆方向から同じ要領で行う。休憩を挟みながら片サイド3セットずつ、計6セット行ったら、すべて終了。これは非常にポピュラーなドリルで、バリエーションも自在に変えられる。たとえば後ろ向きのダッシュをサイドステップにしたり、サイドステップをクロスステップにしたりと、いろいろ応用が利く。

2008年9月21日日曜日

フットワークのトレーニング・21

③.ライン・タッチ(5セット)
 これはパターンBの⑦のドリルを、テニス・コートのラインを使って行うバージョンである。サイドラインからスタートし、まず手前のサービスサードラインまでダッシュ。スタート地点まで戻って、次はセンターラインまで、その次は反対側のサービスサイドラインまで、最後は反対側のサイドラインまでというように、1本ずつ先のラインまで伸ばしていく。各ラインでは、その都度しゃがんで、片手もしくは両手でラインをタッチするように。これも1~2分の休憩を挟んで、5セット行う。ここではコート1面で行っているが、疲れがないときならば、2面を使って行っても良い。また、ダッシュばかりでなく、サイドステップで行っても効果的だ。

2008年9月20日土曜日

フットワークのトレーニング・20

②.ボール運び(ボール5~6個×5セット)
 ラケットを両サイドライン付近に置いておき、片方のラケット面にボールを5~6個置いておく。反対側からスタートし、ダッシュでボールを1個ずつ運ぶというドリル。途中でボールがラケット面からこぼれたらやり直し。ボールを全部運んだら1セットが終了する。これも1~2分の休憩を挟んで、5セット行う。2~3人で競争して行うのも良い。このドリルは、ただ走るだけではなく、しゃがんで起き上がるという動作も加わるので、足腰のトレーニングにもなる。基本的にはV字ダッシュと似た性質のトレーニングだが、遊びの要素も入っているので、選手が練習に飽きているときに用いると効果的。

2008年9月19日金曜日

フットワークのトレーニング・19

パターンC・試合の1カ月~4日前までに行うメニュー

毎日この中から1つか2つをピックアップして行う
①.V字ダッシュ(V字往復5回×5セット)
 その名前の通り、V字を描くようにダッシュするドリル。センターマークからスタートし、まず片方のネットの端までダッシュする。そしてネットにタッチしたら、今度は後ろ向きのダッシュでセンターマークまで戻り、続いて逆サイドも同じように行う。これでV字を1回往復したことになる。連続して5回往復したら、1セットが終了。1セットの所要時間はだいたい60~75秒。1~2分の休憩を挟んで、これを5セット行い、ドリルは終了。試合前の仕上げとして用いると良い。ハムストリング(大腿の裏側の筋肉)を鍛えるのに有効なトレーニングで、女子選手には特に必要なトレーニング。ラケットを持って走るとなお良い。

2008年9月18日木曜日

フットワークのトレーニング・18

⑨.Gボールを使ったドリル
 最後はコーンを使わず、Gボールを使ったドリル。コーチがコートの中央に立ち、選手はサービスラインの中央からスタート。ネットの方向に走って行く。選手がネット付近まで来たら、コーチはGボールをサービスラインぐらいにバウンドするように空中に投げる。選手はターンしてGボールを追い、バウンド後のGボールをキャッチする。これをひとり5セットずつ行い、フットワーク・ドリルはすべて終了。ドリルの終盤は、このような遊びの要素の多いメニューを組むようにし、集中力が途切れないようにする。

2008年9月17日水曜日

フットワークのトレーニング・17

⑧.ボール・スクランブル
 これはやや遊びの要素を取り入れたメニューで、4人でテニスボールを奪い合うというドリル。正方形を作るようにコーンを4つセットし、中央にボールを12個置く。5人いるうちの4人が参加し、それぞれ4つのコーンの位置につく。そのコーンの周囲を自分の陣地として、そこから中央のボールに向かって、4人同時にスタート。ボールをひとつずつ自分の陣地に運び、先に4個ボールを集めた者が勝ちとなる。ただしボールは12個しかないので、通常4個集める前に中央のボールはなくなってしまう。そのため、他人の陣地からボールを持ってきてもOK。その代わり他人のボールを取ったときは、必ず中央を経由してから自分の陣地に運ばなければいけないというルールだ。要するに、他人が4個集めるのを阻止しながら、自分が4個先に集めるという、駆け引きの要素を持ったゲーム。ボールを運びながら終始他人の収集状況を見ておき、それにとっさに反応しなければならないので、単に脚力を鍛えるだけでなく、状況判断能力も養えるというトレーニングである。こうして、勝った者は次は抜けて、待っていた者が入る。そのローテーションで10セットほど行う。

2008年9月16日火曜日

フットワークのトレーニング・16

⑦.ダッシュ&ストップ、およびサイドステップ&ストップ
 再開後は、まずダッシュとストップを組み合わせたメニューから入る。一番手前のコーンからスタートし、まずひとつ前のコーンまでダッシュ。そこでストップして素早く向きを変え、再びダッシュでスタート地点まで戻る。戻ったらまたターンし、今度はもうひとつ先のコーンまでダッシュ。またターンしてスタート地点まで戻る。この繰り返しで、ひとつずつコーンを先に伸ばしていき、ゴールまで行く。これを2~3人競争して行い、ダッシュ、ストップ、ターンのスピードを養う。足のスライドをうまく使って、素早く方向転換することが大切。これが終わったら、今度は同じ要領で、行きはサイドステップ、帰りはダッシュというようにバリエーションを変えて、もう1本行う。

2008年9月15日月曜日

フットワークのトレーニング・15

⑥.ダッシュと後ろ向きダッシュのコンビネーション
 今度は、ダッシュと後ろ向きダッシュに、コーン・タッチとジャンプを組み込んだコンビネーション・メニュー。一番手前のコーンからスタートし、斜め前のコーンまで前向きでダッシュ。そこで両手でコーンをタッチする。そして次のコーンまでは、後ろ向きでダッシュ。着いたらその場でジャンプする。その繰り返しで、コーンを伝ってジグザグに進んでいく。これは筋力強化ではなく、動きを良くするトレーニングなので、タッチとジャンプはしっかり行う。このドリルも2本行う。ここまで終わったら、かなり疲れているはずなので、少し休憩を入れる。水分を補給して、2~3分後に再開。

2008年9月14日日曜日

フットワークのトレーニング・14

⑤.ダッシュ&サイドステップ(パターン2)
 これもダッシュとサイドステップを組み合わせたドリルだが、今度はコース取りが異なっている。スタートしてまず前方のコーンまでダッシュで移動したら、次は斜め後ろのコーンにサイドステップで移動する。またダッシュで直進して、サイドステップで斜め後ろに戻る。これの繰り返しである。④のドリルと比べると走る距離がかなり長くなるので、ハードなドリルだが、やはり素早く、小刻みに足を動かすことが大切。このドリルも2本行う。

2008年9月13日土曜日

フットワークのトレーニング・13

④.ダッシュ&サイドステップ(パターン1)
 今度は、ダッシュとサイドステップをミックスしたドリル。スタートしたら、前方のコーンまでダッシュで移動し、次に斜め前のコーンへサイドステップで移動する。後は交互にその繰り返しである。「直進はダッシュ、ラインを還るときはサイドステップ」と覚えると良いだろう。サイドステップは、なるべく小刻みに行うように心がける。なおこのドリルは2本行う。

2008年9月12日金曜日

フットワークのトレーニング・12

③.サイドステップ(コーン・タッチ)
 これはサイドステップの別のバリエーション。要領は②と同じだが、②よりももう少し早くサイドステップで移動し、ターンの時にコーンを片手でタッチする。これだと、一度しゃがんで起きあがるという動作が加わるので、足腰のトレーニングにもなる。②よりもトレーニング要素がひとつ増えたというパターン。

2008年9月11日木曜日

フットワークのトレーニング・11

②.サイドステップ
 ①の要領でサイドステップを行うドリル。ただし今度はコーンの外側を回るのではなく、コーンの内側を移動する。コーンを1個ずつ伝って、ジグザグにサイドステップで進んでいく。コーンからコーンの間は、サイドステップ2歩で移動。クレーコートで行う場合は、ターンで足をスライドさせてしっかり止まるようにする。

2008年9月10日水曜日

フットワークのトレーニング・10

パターンB

試合の1~2カ月前に行うメニュー
①.ダッシュ
 コーンの置き方は、コート2面ほどの長さに、片側8本ずつ、互い違いにして2列に並べる。コーンの縦の間隔はだいたい歩いて4歩ぐらい、横幅は3歩ぐらい。その日の疲れ具合によってコーンの数は減らしても良い。なお、このコーンの置き方は、この後のメニューにも共通である。最初のメニューは、まず基本的なダッシュのドリルから始める。1番手前のコーンからスタートし、コーンを1本ずつ外側から回り、ジグザグにダッシュする。適当な間隔を空けて次の選手がスタートし、手順良く行う。ターンでは小刻みなフットワークを心がけるのがポイント。大回りしないように注意して行う。

2008年9月9日火曜日

フットワークのトレーニング・9

⑩.スパイダー・ドリル
 コート上に横に並べられたコーンにそれぞれ意味を持たせ、指示に従って選手は動き回るドリル。真ん中の2つのコーンがそれぞれフォアとバックのロー・ボレー、遠い2つがフォアとバックのストローク、そして頭上への指示がジャンピング・スマッシュとなっている。コートには2人同時に入り、指示に従って振り回されるが、こうすることによって選手のトータル的な反応スピード、筋力の強さを2人比較して見る。

2008年9月8日月曜日

フットワークのトレーニング・8

⑨.両足同時のサイドジャンプ
 同じドリルを今度は両足ジャンプで行う。足が疲れてくるとラインまでちゃんと飛べなくなってくるが、声をかけて最後まで頑張らせる。休まず、連続して行うことによって脚力は強さを増すからだ。

2008年9月7日日曜日

フットワークのトレーニング・7

⑧.片足ずつのサイドジャンプ
 サービスサイドラインに立ち、右足で蹴って、左足でサイドラインに着地。今度は、その左足で蹴って、右足でサービスサイドラインに着地するという動作を連続して行うトレーニング。このときにもベースラインから初めてネットまでというように、徐々に前進しながら行うのがポイント。

2008年9月6日土曜日

フットワークのトレーニング・6

⑥.オープンスタンス・スウィング・ドリル(フォア)
 サービスサイドラインをまたいで立ち、右への一歩の踏み込みでサイドラインを踏むようにしながらオープンスタンスで連続してフォアのスウィングを行う。このドリルでは、同じ所でステップとスウィングを繰り返すのではなく、ネット付近からベースラインまで徐々に前進していくことがポイントとなる。現在では頻繁に行われるオープンスタンスでのショットにおけるステップを身につける練習。
⑦.オープンスタンス・スウィング・ドリル(バック)

2008年9月5日金曜日

フットワークのトレーニング・5

⑤.サイドステップ&スウィング
 両サービスサイドラインの内側に1メートル間隔でコーンを置き、左右にサイドステップで動きながらフォア、バックのスウィングを行う。激しく左右に振られたときにもバランスを保つためのトレーニング。連続して横に振られたときでも正確にサイドステップを踏めるように1メートル間隔でコーンを置いてある。2人同時に始めると、徐々に2人の差が現れてくるので、それで選手の能力を計ることもできる。

2008年9月4日木曜日

フットワークのトレーニング・4

④.サーブ、スマッシュ&ボレー
 ベースラインからサーブの素振りをし、すばやくボレー・ポジションまで詰めてファースト・ボレー、さらにネット近くまで詰めたところでロブが上がったと想定しジャンピング・スマッシュする連続ドリル。テニスでの前後の動きをすべて取り入れたメニュー。

2008年9月3日水曜日

フットワークのトレーニング・3

③.ミラー(シャドウ)・ドリル
 3メートルほどの距離にコーンをおき、2人が向かい合わせに立ってフェイクを入れながら左右に動き、相手を振りきった方が勝ちというトレーニング。交互に主導権を握りながら行う。このトレーニングでは、左右へのすばやい対応とステップの切り替え、それに伴う反射神経を鍛えることができる。

2008年9月2日火曜日

フットワークのトレーニング・2

パターンA

試合の2カ月以上前に行うメニュー
①.ウォーミング・アップ
②.ペッパー・ドリル
 2人が1組になり、ひとりが手でボールを投げ、もうひとりはそのボールをラケットで打ち返すというトレーニングを交互に行う。ノー・バウンドで返球するバージョンとワン・バウンドで返球するバージョンがあるが、投げる方はどちらも相手がやっと届くところにボールを出すのがポイント。このトレーニングは反応の速さ、大腿部の筋力強化に有効である。

2008年9月1日月曜日

フットワークのトレーニング・1

 このトレーニング・メニューは、パット・エッチェンベリー氏の考案したものである。彼はチリ生まれの元陸上オリンピック代表選手で、引退後はフットワーク・トレーナーとして、東京オリンピック100メートルの金メダリスト、ヘインズのフットワーク・ドリルを担当した。テニスの世界に入ってからは、ボルグのフットワーク・トレーナーを経て、現在はサンプラス、クーリエ、ブルゲラ、メドベデフといった世界トップ10の内4人のフットワークを担当している。

2008年8月31日日曜日

正しい栄養で練習を助ける・16

まとめ

 正しい栄養は、よいプレイに欠かせないものである。選手の食事は、炭水化物を多く、タンパク質は普通に、脂肪は少なくすること。選手は砂糖や精白小麦粉を避けること。試合の日の水分補給はとても大切である。試合中は少量の水をたびたび飲むこと。試合の前後に最適の食事は、炭水化物を多くとること。

2008年8月30日土曜日

正しい栄養で練習を助ける・15

試合後の食事

 選手は力を出し尽くした試合の後、空腹のため手近の食物を何でも詰め込むことが多い。そしてしばしば、砂糖が多く含まれた食品を摂取してしまう。砂糖は身体の物質代謝や調節機構を妨げるため、この習慣はとても害である。後日、選手は筋肉が重く感じ、ボーッとするとともにイライラして怒りっぽくなる。正しくバランスのとれた食事をすると、試合の翌日を気分よく過ごせるのだ。
 この習慣を避けるために、アメリカのある大学のバスケットボール部監督は、激しい試合の後の選手の食事を細かくチェックするという。試合直後、選手に果汁、果物、パン、サンドウィッチなどを更衣室で食べさせることによって食欲をそぎ、選手が外に出て砂糖の多い食物を詰め込まないようにするそうだ。

2008年8月29日金曜日

正しい栄養で練習を助ける・14

試合前の食事

 勝負の前にはビーフステーキやトンカツを食べる(テキにカツ)、という一昔前の考えはもはや正しくない。タンパク質は消化に時間がかかるし、肉は消化管に入る前に何時間も胃にもたれることがあるからだ。試合前には、ご飯、麺類、パン、果物、野菜などに含まれる炭水化物と十分な量の水が最適である。これをカーボローディングという。脂肪も消化されにくいが、長時間の運動には必要である。乳製品は、試合前には摂取してはいけない。なぜならカルシウムは、エネルギー消費に欠かせないマグネシウムの働きを妨げるからである。

2008年8月28日木曜日

正しい栄養で練習を助ける・13

有害な食品・添加ジュース

 運動前や運動中に飲むのに最適の飲料は何か、という議論は何回も行われてきた。添加ジュースにはさまざまな量のミネラルが含まれているが、その量は牛乳や果汁に含まれているミネラルの量よりはるかに少ない。また、多量の砂糖が含まれている点にも留意すべきである。牛乳は運動の直前直後には飲んではいけない。おそらく最適の飲料は、水3と果汁1の割合で混ぜたものであろう。

2008年8月27日水曜日

正しい栄養で練習を助ける・12

有害な食品・精白小麦粉

 精白小麦粉は、小麦に含まれている重要な栄養素の多くを失っている。小麦やその他の穀物パンが、白パンよりも栄養に富んでいる。

2008年8月26日火曜日

正しい栄養で練習を助ける・11

砂糖の有害な影響

-長年にわたる砂糖の消費により、グルコースのような通常の物質を使用する細胞の働きを衰退させる。
-砂糖は、にきびやその他の肌の障害に関係がある。
-ガンや白血病および痛風は、砂糖の多量の摂取に関連がある。
-砂糖の消化にはビタミンBが必要なので、その欠乏が起こる

2008年8月25日月曜日

正しい栄養で練習を助ける・10

有害な食品・砂糖

 精製された砂糖の及ぼす有害な影響は大きなものである。200年前、平均的日本人は年に2キロしか砂糖を摂取しなかった。現代人は、年に60キロ、すなわち週に1.2キロも摂取する。砂糖は、多くの加工食品に含まれているので、食品のパッケージの成分表をよく読むこと。
 砂糖は、反応性低血糖と呼ばれる状態を引き起こす。すなわち血糖値が急上昇し、エネルギーの高揚感をもたらす。そして身体のバランスシステムが急速に反応して、インシュリンを血流に送り込み、これが意気消沈や集中力の低下をともなう破壊的な影響をまねく。食欲は血糖値によってコントロールされており、この破壊的影響により激しい空腹感を覚える。そしてこの空腹感がさらに多くの砂糖によって満たされると、より大きな破壊的影響が出る。悪循環に陥るのだ。
 食欲は、果物や野菜のような複合炭水化物を摂取し、精製された砂糖を摂取しないことで最も正しくコントロールされる。

2008年8月24日日曜日

正しい栄養で練習を助ける・9

不消化物質

 いまや結腸ガンは、先進国で2番目に多い種類のガンである。医者や栄養学者の多くが、肉や脂肪の多すぎる食事、食物繊維の欠乏した食事、多くの食品に含まれている防腐剤のせいであるといっている。

2008年8月23日土曜日

正しい栄養で練習を助ける・8

水分

 水分は身体のすべての働きに重要であり、身体の約60%は水である。水分によって細胞が働き、水は血液の成分となり、身体の冷却系、リンパ系、神経系に重要な役目を果たしている。
 水は、ほとんどすべての食品に含まれているが、もちろん最良の摂取方法は液体を飲むことである。水にはエネルギーはないが、すべてのエネルギー代謝の基本となっている。
 最近の研究により次のことがわかった。選手に一切の水分を与えずに単調なトレーニングを疲労こんぱいするまで行わせると、その持久力は約1時間である。そして同じ選手に、トレーニングの途中に2回飲みたいだけの水を飲ませると、その持久力は2倍になる。さらに同じ選手にトレーニングの途中に何回も少量の水を与えると、その持久力は元の4倍になる。テニス選手への教訓は、早朝に水を飲み、試合中はのどが乾く前に少量の水を飲むとよいということである。

2008年8月22日金曜日

正しい栄養で練習を助ける・7

ミネラル

 ビタミンと同様、ミネラルは身体の正常な働きには欠かせないものである。ホルモンや酵素の生成にかかわり、骨やその他の部分を形成する。
 カルシウム、マグネシウム、リン、イオウ、塩化ナトリウムおよびカリウムが多量に必要である。そのほか少量必要なものは、鉄分、セレン、マンガン、フッ化物、銅、モリブデン、亜鉛、クロム、コバルトおよびヨードである。

2008年8月21日木曜日

正しい栄養で練習を助ける・6

ビタミン

 ビタミンは、身体の働きと代謝を助ける。細胞の働きには欠かせないものであり、選手の身体が正しく機能するのに重要である。
 ビタミンA、D、EおよびKは脂肪に溶ける。これらは脂肪の中に蓄えられるので、毎日摂取する必要はない。脂肪に溶けるビタミンを取りすぎると、機能低下や消化不良を起こす。
 ビタミンBおよびCは水に溶ける。身体に蓄えられることなく、変換され、余分は尿に混じって排出される。体内のB複合ビタミンのレベルが低くなると、筋肉疲労、けいれん、集中力の欠如を引き起こす。
 制限されたダイエット食では選手に必要なビタミンのすべてを供給できないので、すべての食品群を含んだ、栄養バランスのとれた食事をすることが望ましい。

2008年8月20日水曜日

正しい栄養で練習を助ける・5

タンパク質

 組織の修復や成長がタンパク質の基本的な役割であり、タンパク質は選手の食事で最も重要な要素である。さらにタンパク質は、体内で炭水化物と脂肪が使い果たされた後のエネルギー源として使われる。しかしタンパク質をエネルギーに変えるのはとても難しく、このためタンパク質は、試合がない日とか試合の後に取るのが望ましい。
 タンパク質は、1グラムにつき4キロカロリーである。肉類、魚、鳥肉、乳製品、卵、豆類、小麦麦芽、もやしなどが、タンパク質のよい供給源である。

2008年8月19日火曜日

正しい栄養で練習を助ける・4

脂肪

 脂肪は1グラムにつき9キロカロリーで、より長期のエネルギー源になる。身体は、炭水化物を使い果たした後のエネルギー源として、脂肪を使う。また、保温や身体諸器官の詰め物として使われる。
 脂肪は、炭水化物よりずっと消化しにくいので、食物中に脂肪が含まれすぎていると健康上の問題となる。脂肪は多くの食物中に含まれている。糖分を取らない選手は、エネルギー変換のおかげで炭水化物を脂肪に代えてもあまり問題はない。脂肪の供給源は、バター、油、ピーナッツ類および肉類である。

2008年8月18日月曜日

正しい栄養で練習を助ける・3

炭水化物

 はちみつを含むすべての精製された砂糖は炭水化物である。炭水化物はたやすくグルコース(血糖)に、つまり人体の主要エネルギーに変換され消費される。炭水化物のおかげで、選手は機敏で力強くエネルギッシュであるように感じるし、炭水化物は血糖値を正しく保つ手助けをする。しかし糖分を取りすぎると、頭がフラフラしたり、疲れやすくなったり、集中力が欠けたりする。
 炭水化物は1グラムにつき4キロカロリーになる。炭水化物の最もよい供給源は、果物、野菜、麺類、パン、およびご飯を含む穀物食品である。炭水化物は人体ですばやく吸収され、エネルギーに変換されやすい。

2008年8月17日日曜日

正しい栄養で練習を助ける・2

食品群

 食物は7つの基礎物質でできている。炭水化物、脂肪、タンパク質、ビタミン、ミネラル、水分、不消化物質である。この各々が、身体に栄養を与える独特の働きをしているのである。選手は、試合中の身体的、精神的、感情的な緊張状態において、各々が自分の身体にどのような影響を与えるのかを理解することが大切である。

2008年8月16日土曜日

正しい栄養で練習を助ける・1

 申し分なく運動するには正しい食事が欠かせないが、自分たちの食習慣や食事の必要性について考えている選手は少ない。以下の栄養ガイドラインは、運動選手なら理解し、従うべきものである。

2008年8月15日金曜日

競技に合わせ「適時適食」・4

持久力に欠かせぬ水分

中性脂肪分解
 一方、マラソンではレース中も酸素が供給されるので、体内の中性脂肪を分解してエネルギー源にしている。レース中は「なるべく糖は取らない」選手が多いそうだ。
 もちろん、レースが始まってしばらくはグリコーゲンの「貯金」を使うが、やがて血糖値が下がり、脂肪が分解、酸化され始める。もし吸水時に糖を補給すれば、いつまでたっても脂肪分解の指令は出ないし、そのうち糖も尽きてしまう。
 かといって、暑いアトランタで水を補給しないと、脱水症状を起こしかねない。
 「取る水が少ないと、血液の濃度が濃くなり過ぎ、酸素を運んだり体温を下げたりする効果が止まって、エネルギーを発揮するどころではない」と、日本オリンピック委員会(JOC)フィットネスコーチの高岡郁夫・順天堂大助教授。マラソンでは、糖より水が欠かせないと言う。

2008年8月14日木曜日

競技に合わせ「適時適食」・3

 時計にらんで

 グリコーゲンの「貯金」を取り崩しながら頑張っているのだが、運動を始めるとやがて「貯金」を使い果たす。そこで直接、糖を含む水や果物を取ることになるのだが、この取り方が難しい。
 横浜国立大の金子佳代子助教授(食品栄養学)は「糖を一気に取ると血糖値が急に上がり、すい臓からインシュリンが分泌され、糖を蓄える作用が働く。血糖値が上がり、糖が十分供給されなくなるので、力が発揮できなくなる」と説明する。
 試合中に糖を取るときは、ゆっくり吸収できる方がいい。選手がよく口にするバナナは、糖がオレンジやメロン、リンゴの倍ほどもあり、腸で徐々に分解されながら、30分から1時間ほどかけて吸収される。
 柔道選手の栄養管理を続けている明治製菓スポーツ&ニュートリション・ラボの杉浦克己所長は「試合まで2・3時間あればおにぎり。1時間を切るようだとバナナ。ほんのわずかな時間しかないときは、ブドウ糖を入れた水を飲んだりしています」と話す。
 午前中に予選、勝てば午後に準決勝や決勝といった日程になるので、おにぎりかバナナか、時計とにらめっこで考えるそうだ。

2008年8月13日水曜日

競技に合わせ「適時適食」・2

瞬発力には炭水化物

 ご飯かパスタ
 「海外でご飯を食べられないときは、試合前にパスタを食べるよう、ジュニアの頃から教えてきました」と、伊達選手のコーチを務めた日本テニス協会の蝶間林利男・横浜国立大教授は言う。
 多くの競技では、伊達選手のように試合の数日前からご飯やパスタなどの炭水化物を取る。激しい動きで酸素が十分供給されない場合、エネルギーは糖から得るのが普通だからだ。
 炭水化物は体内でブドウ糖に分解された後、多糖類のグリコーゲンとして筋肉や肝臓に蓄えられる。選手は、このグリコーゲンを再びブドウ糖に分解、エネルギー源としているが、その反応は酸素が無くても進む。

2008年8月12日火曜日

競技に合わせ「適時適食」・1

 ウィンブルドン選手権で活躍した伊達公子選手は、試合が近づくと、ご飯やパスタをたくさん食べた。アトランタ五輪で日本選手団の旗手を務めた田村亮子選手ら、柔道のメンバーも、競技の合間におにぎりやバナナを口にしたという。一流の選手は、食べ物ばかりか、水分の取り方にも独自の工夫をしている。瞬発力を求められる競技では十分な炭水化物、持久力が大事なレースでは水をうまく補給することが、試合を制するカギを握っている。

2008年8月11日月曜日

応急処置と簡単な治療について・12

鼻血

 ボールが当たって鼻血が出たのなら、5~10分、優しく圧力を加えれば、ほとんどの場合は止まる。氷で冷やすのもたいへん効果がある。もしラケット等が当たって、鼻が腫れていたり、ゆがんでいたりするときは、救急病院へ行ってレントゲンを撮り、骨折していないか調べてもらうこと。

2008年8月10日日曜日

応急処置と簡単な治療について・11

まめ

 手足のまめは、過度の湿気、暑さ、摩擦、そして圧力が原因となって生じる。治療よりも予防が大切。  まず最初に、自分に合った道具を使うこと(サイズの合った靴やラケットを選ぶ)。第2に、ラケットや靴に接触する皮膚は、常に乾燥させるようにする。そして最後に、まめのできやすい圧力のかかる場所に、皮膚が強くなるまでの間、ばんそうこうやテープをはっておく。
 まめができても、つぶしてはいけない。その下の皮膚はとても過敏になっているからである。その場合はバンドエイドを2・3日貼っておくとよい。大きいまめができたら、医者に頼んで中の水を出して消毒してもらう。もし、まめがつぶれてしまったら、すり傷と同様にきれいに洗い、消毒用軟膏をつけて包帯を巻いておく。

2008年8月9日土曜日

応急処置と簡単な治療について・10

虫刺され

 虫に刺されるのを予防するには、虫が好むようなオーデコロンなど、または鮮やかな色彩の衣服を避けること。虫に刺されてしまったら、赤く腫れあがったところを氷で冷やし、かゆみは塗り薬で鎮める。
 局所的な不快感はあっても、一般に虫刺されでそれ以上の大した問題はない。しかしたまに虫刺されにアレルギー体質の人もいる。まれに命にかかわることにもなりかねないので、自分の体質をよく認識しておくこと。アレルギー体質の人は、実際に刺された場所以外にもひどい腫れや蕁麻疹(じんましん)が起こるので、見分けることができる。以前にアレルギーの反応を起こしたことがある人は、たとえ軽症だったにしても虫刺され用の救急セットをいつも持ち歩くようにすること。そして、免疫(めんえき)をつけるための注射について、医師と相談した方がよい。

2008年8月8日金曜日

応急処置と簡単な治療について・9

気絶した場合

 ソフトテニスをしていて意識不明になることはほとんど考えられないが、それだけに万一、意識不明になるようなことがあると、余計に心配の種になる。
 まず原因が、窒息、ひきつけ、脳震盪(のうしんとう)、心臓発作のいずれにせよ、最初の処置はみな同じ。ABCの順にチェックしていく。つまり、A= Airway(気道)と口が開いているか。B= Breathing(呼吸)をしているか。もし呼吸をしていなければ、人工呼吸をする。そしてC= Circulation(血液の循環)はどうかを調べる。もし脈がなければ、心臓マッサージをする。

2008年8月7日木曜日

応急処置と簡単な治療について・8

日射病と熱射病

 まず高い温度や湿度が、人体に与える影響を十分わきまえておくこと。めまい・錯乱・吐き気・頭痛・あるいは汗もかかずに肌が赤く火照ってくる、などはすべて日射病の初期症状である。患者は太陽の当たらない所に寝かせ、冷たい水や氷を当てるか、氷水に浸すかして熱をさましてやる。冷たい水を飲ませるのもよいが、患者の意識がしっかりしていて、飲み込める状態のときでなければならない。すぐに症状が好転しなければ、救援を頼み患者を病院へ移す。これは緊急事態だが、迅速な正しい看護を受けることができれば、結果はよい。


2008年8月6日水曜日

応急処置と簡単な治療について・7

ヒザの傷害

 ヒザを曲げたまま濡れたところで滑ったり、無理をして急にヒザを動かしたりすると、軟骨の裂傷や靭帯(じんたい)の捻挫など、ヒザの内部構造を傷つけてしまうことがある。すると歩行が困難になり、遅くとも24時間以内に患部は腫れあがる。
 腫れてしまうと診断がしにくくなるので、できるだけ早く整形外科医を訪れること。とくに靭帯が断裂したときなど、ただちに手術を必要とすることもある。普通に歩くことも困難なほどの痛みがあるような重傷の場合は、アイスパックや包帯などは一時しのぎの処置としてのみ使用する。

2008年8月5日火曜日

応急処置と簡単な治療について・6

脱臼

 しょっちゅう起こることではないが、テニスコート上でも肩を脱臼することもある。脱臼を直した経験がなければ、専門医に任せることにして、自分ではいじらない方がよい。脱臼した人を救急病院に連れていくときには、吊り包帯を利用するとよい。

2008年8月4日月曜日

応急処置と簡単な治療について・5

骨折

 ソフトテニスで骨折することはまれだが、可能性はある。応急処置としては、患部を固定して動かない状態にしておく。必要なら、患者の骨折した腕や足をラケットなどに結びつけ、動きでさらに傷ついたりするのを防ぐ。そして近くの救急病院にかけつける。

2008年8月3日日曜日

応急処置と簡単な治療について・4

捻挫(ねんざ)と挫傷

 以前から行われているように、休息と冷湿布、そして腫れと痛みを鎮めるために、患部を上にあげておくことがまず第一のステップ。また、柔らかい包帯などで患部を圧迫しておくのもよい。
 炎症とそれに続く腫れと痛み、そして機能障害を軽減するためにも、できるだけ早く治療しなければならない。重傷の場合、医者による正しい診断と適切な治療が必要。

2008年8月2日土曜日

応急処置と簡単な治療について・3

筋肉のつり(痙直)

 筋肉のつりの原因は、完全にはわかっていない。俗に筋肉がつるというのは、無意識にあるいは不随意的に、筋肉が痙直を起こすことである。筋肉のつりで筋繊維自体が傷つくことはないが、激しい痛みのためしばらくは歩けないこともある。
 原因としては、脱水症状、筋肉の衰弱、筋肉に対する軽い傷害、あるいは筋肉に無理な力をかけたりすること、などが考えられる。
 ほとんどは、つった筋肉を優しくゆっくりストレッチすることによって治ってしまう。従って、例えばふくらはぎのこむらがえりは、壁に向かって腕を立て、ふくらはぎからアキレス腱をストレッチさせるような運動なら、どの運動でもよい。
 ストレッチングで効果がない場合は、患部をマッサージし、氷で冷やすとよい。また、筋肉を休めることも大切である。もし、こむらがえりの症状が軽く、応急処置で痛みが治まったら、十分注意しながら運動を再開してもよい。
 暑いときにこむらがえりを起こしやすい人は、水をたくさん飲むようにするとよい。
 ソフトテニスによる他の傷害と同様に、筋肉のつりを治療する最善の方法は、持久力を養い、水分を補給し、十分にストレッチングやウォームアップをすることだ。さらにテクニックとフォームに気を配れば、バランスを崩しても突然筋肉に過度の負担をかけることもなく、予防することができる。


2008年8月1日金曜日

応急処置と簡単な治療について・2

切り傷とすり傷

 切り傷は、まず石鹸(せっけん)と多量の水とで傷口を洗うのがよい。消毒液はとくに必要ない。出欠をとめるには普通、適度の圧迫をかけることと、氷で冷やすのがよく効く。
 しかし、切り傷が筋肉にまで達したり、切り口が2~3センチ以上になったり、関節まで達したりした場合、あるいは出血が止まらない場合(頭皮の裂傷など)は、専門医の診療を受け、傷口を外科的に縫い合せる必要がある。また、錆びた釘が刺さったときだけでなく、どんな切り傷の場合でも、破傷風(はしょうふう)の予防が必要だ。
 すり傷やひっかき傷はすぐに洗い、傷口に消毒液と軟膏(なんこう)を塗って保護しておく。傷が大きかったり、感染したりしたら、医師に診てもらうほうがよい。

2008年7月31日木曜日

応急処置と簡単な治療について・1

 ソフトテニスはとても人気のあるスポーツであり、競技人口も多い。インターハイや国体などの大きな大会では、たいてい看護婦や医者が待機しているが、そうでない場合にも以下のような傷害に出くわすこともあるだろう。自分や仲間が思いがけず傷害を負ってしまったときのために、ソフトテニスによくある傷害の手当の仕方を覚えておくべきである。

2008年7月30日水曜日

適切なケガの予防と治療・4

リハビリテーション

 休養と治療でケガは治っていく。痛みが和らいだら、選手は試合や練習に完全復帰できると感じるかも知れない。しかし、最も犯しやすい間違いは、リハビリテーションが完了する前に復帰してしまうことである。組織の急激な機能低下や退化が起きているため、ケガを再発しやすいということを忘れてはならない。再発すると、休養と治療をまるまるやり直さなければならない。時間と労力の大変な無駄である。
 ケガの痛みが和らぎ始めたら、選手は徐々に練習に戻ること。最初は患部の筋肉を安定させ保持するサポーターなどを着けるとよい。患部が強くなるにつれて筋組織を強化し、再発を防ぐために運動を徐々に増やしていくべきである。患部の動きを制限するテーピングも、このリハビリテーションの期間には大いに役立つ。

2008年7月29日火曜日

適切なケガの予防と治療・3

ケガの治療と管理

 ケガをした場合は、正しい方法で治療と療養に取り組むこと。ケガは、その性質により、3つに分類できる。その各々について、正しい治療法を知っておくこと。

急性のケガ
 急性のケガとは、その場のケガ、つまり試合や練習中に起きたケガのことである。例としては、足首の捻挫、筋や腱の断裂、骨折などである。この種のケガをするとプレイはできない。
 治療:当日と翌日は氷などを用いて圧迫する(アイシング)。心臓より上にあげておくのもよい。3日目も温めてはいけない。通常、3日か4日の運動中止期間が必要である。

亜急性のケガ
 亜急性(あきゅうせい)のケガとは、時間の経過とともに強まってきたケガのことで、プレイの邪魔になるものである。過度の筋肉疲労などがこれに当たる。このケガをすると、ケガのためにプレイが邪魔されてうまくいかないため、精神的にも負担を感じる。
 治療:入念にウォームアップする。練習後にはアイシングをする。非炎症性の薬(アンメルツなど)を塗る。

再発性のケガ
 再発性のケガとは、通常、テニス肘、腕の回旋筋(かいせんきん)損傷、肩関節の滑液包炎などの関節傷害のことである。再発性のケガは思いがけないときに再発する。
 治療:入念にウォームアップをする。練習後にはアイシングをし、医師の管理下において薬物治療をする。

注意
 アイシングは組織への血流を圧迫する。従って急性のケガの腫れを引かせる。温熱は血管を広げ、血流を早くし、ケガをひどくする。応急処置で温めてはいけない。
 ケガをしていて試合や練習をする場合は、ゆっくり入念にウォームアップし、終わったらすぐに氷などを使ってマッサージや圧迫をすること。

2008年7月28日月曜日

適切なケガの予防と治療・2

ケガの予防

 ケガは練習の時間を奪うため、選手にとって大変な負担になる。したがってソフトテニスの選手がケガの予防処置を講じることはとても重要である。以下の方法はケガの予防に役立つので、毎日の練習にくり入れなければならない。

練習前には体温を上げる
 人間の筋繊維と結合組織は、ゴムバンドのようである。ゴムバンドが冷えているのに激しい勢いで引っ張れば、切れたり壊れたりする。しかし同じゴムバンドを暖めてから、急に引っ張ったりしないでゆっくりと伸ばせば、弾力性が出る。同様に冷えた筋肉を急に曲げたり伸ばしたりすると切れることもある。筋肉を温め、それから静的なストレッチングでゆっくりとストレッチすれば、効果的に曲げたり伸ばしたりできる。体温が上がると、筋肉の収縮や弛緩のスピードも増す。軽いジョギング、縄跳び、体操などが体温を上げるのに効果がある。

一貫したストレッチング手順で行う
 ストレッチングをすると筋肉はリラックスし、血液循環や酸素の供給が有効に行われるようになる。柔軟体操も、疲労した筋肉から乳酸を運び出すことにより、筋肉痛を減らすのに役立つ。
 しかしストレッチングのしすぎは、靭帯や関節に損傷を与える。従って、静的(非運動的)は基本を含んだ、行いなれているプログラムを毎日実施するのがよい。

以下のガイドラインは、ストレッチングの手順として守ること
1.体温が1℃上がるか汗が出始めるまでウォームアップする
2.静的(非運動的)で段階的なプログラムのみを行う
3.すべての筋肉群をストレッチする
4.ストレッチしすぎない。またストレッチングが不足してもいけない
5.練習の開始前に、もう1回汗を出す

2008年7月27日日曜日

適切なケガの予防と治療・1

 ソフトテニスの選手は、他の種目の選手よりも多くの試合や練習をする。接触スポーツのような打撲傷や挫傷(ざしょう)にはあまり縁がないが、試合や練習が続くと多くのストレスと緊張に関係したケガが起こる。
 腱(けん)や靭帯(じんたい)のような身体の結合組織が影響を受け、筋組織、滑液包(かつえきほう)、腱鞘(けんしょう)や、身体の他の潤滑油的な組織もまた危険にさらされる。
 ソフトテニスは1年を通して行うスポーツである。他の種目の多くはオフシーズンがあり、選手は十分に休息したり身体を癒(いや)したりできる。しかしソフトテニスでは、次の試合や練習の休みない追求が始まるので、スピードプレイへの準備が十分に整う前に試合に引き戻されることが多い。そしてそのため、再びケガをしたり、ケガがぶり返す機会が増える。ソフトテニスの選手は、身体に過度のストレスをずっと課していることが多いため、ケガの予防処置や治療について理解することは、きわめて重要である。

2008年7月26日土曜日

ストレッチングとコンディショニング・7

ケガの予防の考え方

 これでプレイ前後の運動の流れについては、ひと通り説明したわけだが、最後にケガの予防の考え方全般について、いくつか付け加えておこう。
 ここまででも何度か述べたが、ケガの予防でもっとも大切なのは、つねに自分の身体の状態を把握しておくということである。これはレギュラー選手であろうとなかろうと、同じことだ。結局それが、痛みや異変に対して敏感であるということにつながるのだ。
 ソフトテニスは、オーバーユース(使いすぎ)によるケガが多いスポーツである。つねに身体のチェックを怠らずにいれば、どこかでシグナルが現れるはずだ。したがって、急に激痛がきたりするのは、普段そういったシグナルを見落としている証拠である。
 また、ソフトテニスのケガというのは、よく使う部分の筋肉が弱いということと、筋力がアンバランスであることが、主な要因になっている。例えば、肩や肘は、ソフトテニスでは特によく使う部分。にもかかわらずそこが弱いと、ケガに結びつくのだ。そういう認識を持って運動をしていけば、大きなケガには至らないだろう。また筋力のアンバランスについても、例えば背筋が著しく強いのに、腹筋が弱かったりすると、どこかに負担がかかり、ケガにつながる。あるいは右足をケガした後、右足ばかりトレーニングしてアンバランスになると、今度は左足に負担がかかってケガしたりする。そうしたことを念頭において、バランスよく身体を鍛えることが大切だ。
 最後に、これは予防ではなく再発防止の話になるが、ケガというのは、痛みがあるときよりも、痛みがなくなってからの方が重要だということだ。多くの人は、ケガをすると、痛みがあるうちは治療やリハビリをしっかり行うが、回復して痛みがなくなると、そこで終わりにして、すぐにプレイに復帰してしまう。しかし、ケガをする以前よりもその部分を強くしておかなければ、また再発する可能性が高く、意味がないのである。受傷前の体力、筋力レベル以上まで高められるように、痛みがひいた後も継続してトレーニングすることが大切だ。

2008年7月25日金曜日

ストレッチングとコンディショニング・6

 ではそれぞれ順を追って説明していこう。まずウォーミング・アップの最初は、リンバリング・アップと呼ばれるものから始める。リンバリング・アップとは、軽い体操のことで、いわば「ウォーミング・アップのためのウォーミング・アップ」である。ラジオ体操のような身近なものでも良いし、それほど長くやらなくても良い。屈伸や伸脚、前後屈などのごく簡単なメニューでも十分だ。用はゆっくり身体を動かし始めるということである。
 それが終わったら、次は身体を温めるためのジョギング。「ランニング」ではなく、あくまで「ジョギング」なので、速く走る必要はない。ゆっくりと、軽く汗ばむ程度に走れば十分。これは夏季でも同じである。そうして徐々に身体が温まってきたら、いよいよストレッチングに入る。
 ストレッチングで気を付けなければならないのは、やはり前述のように暖かい場所でやるということ。とくに冬のような寒い時期はなおさらだ。体育館などがあればそこで行うのがベストだが、そうでなければ室内や、日当たりがよく風の通らないところを探して行うと良い。そしてストレッチングの後は、一度汗を拭いてからコートに立つなどの配慮も、ぜひとも必要だ。
 もうひとつ意識しなければならないのは、ただ漫然とストレッチするのではなく、自分の身体の状態を細かくチェックしながら行うということ。身体の各部を伸ばしながら、筋肉の張りはどうか、関節の柔軟性はどうか、痛みや違和感はないかなど、慎重にチェックするのだ。普段と比べて少しでも異変があったら、それを見逃してはいけない。
 ストレッチングの後はいよいよコートに立つ。しかし、いきなりハードに打ち出すのは禁物。まずは軽い乱打から始める。ここまで行ったウォーミング・アップは、いわば運動をするための準備。ようやく身体を動かす準備ができたということなので、次はソフトテニスをするための準備が必要なのだ。それが乱打というわけである。最初は短い距離からボレー・ボレーで始めて、それから徐々にダイナミックにしていくとよい。
 また、乱打でも、ただ漫然と打つのではなく、自分の身体の状態をチェックしながら打つことが大切。ボールを打ちながら、首、肩、腰、足など、それぞれの状態を1カ所ずつ確かめていく。ボールを打った感覚が良かったからといって、それで身体の調子がよいと捉えてしまうと、ケガにつながるので気を付けてほしい。
 乱打から徐々にペースを上げていったら、あとは本格的なプレイに移る。これに関しては、それぞれに思い切りプレイすればいいわけだが、ただその間も、身体の各部の状態のチェックは忘れずに。動きの悪い部分があったら、プレイ中でもこまめにストレッチすること。
 プレイを終えたら、次はクーリング・ダウンだ。クーリング・ダウンのストレッチングは、基本的にウォーミング・アップの時と同じメニューで良い。やはり少し身体を温めてから行うようにする。また、プレイで特に疲労した部分や、以前にケガをしたことがあり不安があるという部分は、そこを重点的にストレッチするなり、⑦のコンディショニング・エクササイズを平行して行うと良い。コンディショニング・エクササイズとは、身体の各部の機能や能力を高める運動のことで、筋力トレーニングなども含んだ総合的な運動。ストレッチングの中に、これを織りまぜて行うのである。たとえば肩に不安があるなら、肩のストレッチングの前に、肩のコンディショニング・エクササイズを組み入れて行う、という具合だ。
 そうしてストレッチングが終わったら、クーリング・ダウンはとりあえず終了である。あとは自宅に戻ってから、あいている時間があったときに、特に強化したい部分のコンディショニング・エクササイズをやるとなお良い。

2008年7月24日木曜日

ストレッチングとコンディショニング・5

プレイ前後の、理想的な運動の流れ

①リンバリングアップ(軽い体操)・・・・・・ラジオ体操など、簡単なもので良い
②身体を温めるためのジョギング・・・・・・軽く汗ばむ程度。夏季も同じ
③ストレッチング・・・・・・冬は暖かく、風のない場所で行う
④プレイのための準備(乱打など)・・・・・・最初は軽く、徐々にダイナミックに
⑤本格的なプレイ
⑥クーリング・ダウンのストレッチング・・・・・・身体を温めてから行う
⑦コンディショニング・・・・・・自宅で行うか、⑥と平行して行う

2008年7月23日水曜日

ストレッチングとコンディショニング・4

プレイ前後に行うべきこと

 ストレッチングの前に身体を温めることの必要性は理解できたことと思う。言うなれば、ストレッチングは、ウォーミング・アップの一部分でしかないわけだ。ではウォーミング・アップ全体は、いったいどのような流れで行えば良いのだろうか。
 下記の表は、ウォーミング・アップからプレイ、そしてクーリング・ダウン(整理運動)までの流れを示したものである。①から④までがウォーミング・アップにあたり、⑥と⑦がクーリング・ダウンにあたる(⑦は帰宅後に行っても良いので、その場合はクーリング・ダウンには当たらない)。ストレッチングは、その両方に含まれている。

2008年7月22日火曜日

ストレッチングとコンディショニング・3

身体を温めてからストレッチしなければ効果は低い

 たとえば冬の寒い日、コートに到着し、すぐにコートサイドでストレッチしている人がいたとする。多くの人はそんな光景を見ると、「偉いなあ」とか「感心だなあ」などと思うだろう。しかしそのようなストレッチングは、実はまったく誤解だらけの行為なのだ。
 はっきり言って、身体が暖まっていない状態でいきなりストレッチしても、ほとんど効果はない。ストレッチングの前に、簡単な体操や軽いジョギングをして、身体を温めてからでないと効果がないのだ。また、ストレッチングをする場所も、なるべき暖かいところを選ばなくてはいけない。風の通りやすいコートサイドなどではなく、室内か、暖かい日溜まりなどが理想的。そうでなければすぐに身体が冷えてしまい、効果は上がらない。
 身体が冷えているということは、すなわち関節の可動範囲が狭く、筋肉の動きも悪いということを意味する。その狭い範囲の中でストレッチするよりも、身体を温め、可動範囲を広げてから行う方が効率が良いというのは、考えてみれば当然の道理だ。思い浮かべてもらえばわかると思うが、風呂に入った後に屈伸などをやると、普段より柔らかくなっていると感じることが誰でもあるはずだ。それだけ身体が温まっているときと、冷えているときとでは、可動範囲に違いがあり、それはストレッチングの効果にもそのまま影響する。身体が固い状態のときに、もし余分に力をかけてしまったりすると、ケガにつながることさえあるのだ。

2008年7月21日月曜日

ストレッチングとコンディショニング・2

「ストレッチング」イコール「ウォーミング・アップ」ではない

 一般的に、ケガの予防や再発防止において、ウォーミング・アップ(準備運動)の重要性は、よく理解されている。さまざまな雑誌や本で、ストレッチングのメニューが写真や図解入りで分かりやすく紹介されており、諸君もそうしたものを目にする機会もあるだろう。したがって、身体の部所ごとにどのようなストレッチングをすれば良いかということは、皆ある程度の知識を持っているはずだ。
 ストレッチングのメニュー自体は、雑誌などで紹介されている基本的なもので十分である。それらを大い活用すると良いだろう。ただ問題なのは、多くの人が、プレイ前後にしっかりそれらのストレッチングを行っていれば、それで安全だと思っていることだ。つまり「ストレッチング」イコール「ウォーミング・アップ」という認識を持っており、ストレッチング以前にも準備が必要であることを、ほとんどの人が理解していない。また、ストレッチングを行う場所や、行いながら何をチェックすべきかということも、意識している人は少ない。すなわち、メニューだけは知っているが、ストレッチングの総合的な考え方、位置付けに関しては、ほとんど知らないというのが実状だろう。

2008年7月20日日曜日

ストレッチングとコンディショニング・1

ケガの予防、再発防止のために

 ケガの予防あるいは再発防止のためには、ストレッチングや、ウェイト・トレーニングなどのコンディショニング・エクササイズが欠かせないことは、誰でもわかっているはずだ。しかし多くの人は、その具体的なメニューは知っていても、それをいつ、どのような状況で行うべきかなどは、理解していない。「プレイの前後にストレッチすれば大丈夫」ぐらいの認識しかない人がほとんどだろう。また、ストレッチするときに、自分の身体の各部の状態をしっかり把握せずに行っている人も、かなり多いのではなかろうか。しかしそれでは、効果はほとんど期待できない。ストレッチングの位置付けや、総合的な予防の考え方を踏まえた上で、具体的にどのようなストレッチングやコンディショニングを行えばいいのか、紹介していこう。

2008年7月19日土曜日

参考文献

Coaches Guide to Sport Psychology by Rainer Martens, Human Kinetics Publishers
Life and Health, 3rd edition by Ralph Grawunder and Marion Steinmann, Random House
Mental Toughness Training for Sports by James E. Loehr, J. Osawa & Co. Ltd.
Personality Types by Taibi Kohler, Kohler and Associates Processed Communication Managers.
Playing Tennis To Win by Robert Nideffer & Rosalyn Fairbank, UNI Agency
Tennis Medic by Steven R. Levinsohn & Harvey B. Simon, The C. V. Mosby Company
Total Tennis Training by Chuck Kriese, Master Press
前田理生(ソフトテニス部監督)
瀬戸口敏志(ソフトテニス部監督)
ソフトテニス指導教本(大修館)日本ソフトテニス連盟
ソフトテニスコーチ教本(大修館)日本ソフトテニス連盟
月刊ソフトテニスマガジン(ベースボールマガジン社)
朝日新聞
国際ルールソフトテニス(講談社)若月道隆
実践軟式テニス(大修館)石井源信・西田豊明
イラストで見る軟式テニスドリル(大修館)石井源信・他3名
月刊テニスジャーナル(スキージャーナル社)
メンタルトレーニング・勝つための精神強化法(ナツメ社)高橋慶治

2008年7月18日金曜日

目次


ストレッチングとコンディショニング
適切なケガの予防と治療
応急処置と簡単な治療について
競技に合わせ「適時適食」
正しい栄養で練習を助ける
フットワークのトレーニング
トーナメントで勝つために
試合に強くなるために試合を観察する方法
相手の身体能力を見極めて勝つ方法
タメを生み出すポジション取り
ワンランク上の前衛になる
メンタルトレーニングについて
ソフトテニスの心理学
試合での心理的トラブルとその対処法
ピンチから脱出する方法
集中力を高める視線のコントロール
勝利を得るための精神コントロール
弁解や防衛規制を避ける
個人スポーツのクラブの運営について

「おまけ」
正しい水分補給
試合前の準備に集中する

2008年7月17日木曜日

前書き

 本書は、過去10数年間にわたって部のミーティングに使用してきた資料を、1冊にまとめたものである。その時その時に必要と思われる内容を取り上げてきたため、重複する部分が少なからずある。また、バルセロナやアトランタ・オリンピックの話題を前提にしたり、時事的な内容も含まれている。だが、特に書き直すことなく、そのまま収録した。
 コートの上でボールを打つことだけが練習ではない。試合で勝つためには、強くなるためには、技術だけではなく、体力も精神力も向上させなければならない。体力をつけようと思えば、毎日の厳しい練習に取り組むことはもちろん、計画的・継続的にトレーニングを積む必要があるが、そのためにも健全な身体づくりが欠かせない。食生活(栄養補給)や規則正しい生活(健康管理)への気配りが大切である。
 また、大事な場面で集中力を発揮し、多少のことではくじけない粘り強い精神力を身につけるためには、日常の生活が練習なのである。苦手な科目の勉強でも投げ出さず、自ら困難を乗り越えることによって、ピンチにも動じない我慢強さが養われる。行事などで他人がやりたがらないような仕事でも率先して取り組むことによって、緊張した場面でも試合をリードする思い切りの良さや自信が身につく。そして部活のために制限された勉強時間で、最大限の効果をあげられるよう、集中力を鍛えるのだ。その上で、試合中に自分の感情をコントロールできるようなテクニックを習得することになる。
 諸君の先輩達は、本書に収められた内容をもとに、また各自が工夫して、素晴らしい成果をあげた。秋の国体まで部活を続けながら、一般入試で大学に進学した先輩もいる。食事のメニューをすべて自分で決めていた先輩もいる。口で言うのは簡単だが、保護者の協力も欠かせないし、実際には並大抵のことではない。
 毎日毎日、練習すればするほど、技術的には上手になっていく。体力的にも精神的にも、ある程度までは伸びるだろう。しかし、ただ漫然と取り組むだけでは、すぐに限界が来てしまう。そこでワンランクアップするためには、みんなと同じ練習をこなしているだけでは不可能だ。朝の自主練習や、家での自主トレも必要であるが、壁に突き当たったときのヒントのいくつかが、本書には収められている。どれだけ取り組むかは諸君次第だが、先輩達と同様、有効に利用してくれるよう期待している。