2008年7月31日木曜日

応急処置と簡単な治療について・1

 ソフトテニスはとても人気のあるスポーツであり、競技人口も多い。インターハイや国体などの大きな大会では、たいてい看護婦や医者が待機しているが、そうでない場合にも以下のような傷害に出くわすこともあるだろう。自分や仲間が思いがけず傷害を負ってしまったときのために、ソフトテニスによくある傷害の手当の仕方を覚えておくべきである。

2008年7月30日水曜日

適切なケガの予防と治療・4

リハビリテーション

 休養と治療でケガは治っていく。痛みが和らいだら、選手は試合や練習に完全復帰できると感じるかも知れない。しかし、最も犯しやすい間違いは、リハビリテーションが完了する前に復帰してしまうことである。組織の急激な機能低下や退化が起きているため、ケガを再発しやすいということを忘れてはならない。再発すると、休養と治療をまるまるやり直さなければならない。時間と労力の大変な無駄である。
 ケガの痛みが和らぎ始めたら、選手は徐々に練習に戻ること。最初は患部の筋肉を安定させ保持するサポーターなどを着けるとよい。患部が強くなるにつれて筋組織を強化し、再発を防ぐために運動を徐々に増やしていくべきである。患部の動きを制限するテーピングも、このリハビリテーションの期間には大いに役立つ。

2008年7月29日火曜日

適切なケガの予防と治療・3

ケガの治療と管理

 ケガをした場合は、正しい方法で治療と療養に取り組むこと。ケガは、その性質により、3つに分類できる。その各々について、正しい治療法を知っておくこと。

急性のケガ
 急性のケガとは、その場のケガ、つまり試合や練習中に起きたケガのことである。例としては、足首の捻挫、筋や腱の断裂、骨折などである。この種のケガをするとプレイはできない。
 治療:当日と翌日は氷などを用いて圧迫する(アイシング)。心臓より上にあげておくのもよい。3日目も温めてはいけない。通常、3日か4日の運動中止期間が必要である。

亜急性のケガ
 亜急性(あきゅうせい)のケガとは、時間の経過とともに強まってきたケガのことで、プレイの邪魔になるものである。過度の筋肉疲労などがこれに当たる。このケガをすると、ケガのためにプレイが邪魔されてうまくいかないため、精神的にも負担を感じる。
 治療:入念にウォームアップする。練習後にはアイシングをする。非炎症性の薬(アンメルツなど)を塗る。

再発性のケガ
 再発性のケガとは、通常、テニス肘、腕の回旋筋(かいせんきん)損傷、肩関節の滑液包炎などの関節傷害のことである。再発性のケガは思いがけないときに再発する。
 治療:入念にウォームアップをする。練習後にはアイシングをし、医師の管理下において薬物治療をする。

注意
 アイシングは組織への血流を圧迫する。従って急性のケガの腫れを引かせる。温熱は血管を広げ、血流を早くし、ケガをひどくする。応急処置で温めてはいけない。
 ケガをしていて試合や練習をする場合は、ゆっくり入念にウォームアップし、終わったらすぐに氷などを使ってマッサージや圧迫をすること。

2008年7月28日月曜日

適切なケガの予防と治療・2

ケガの予防

 ケガは練習の時間を奪うため、選手にとって大変な負担になる。したがってソフトテニスの選手がケガの予防処置を講じることはとても重要である。以下の方法はケガの予防に役立つので、毎日の練習にくり入れなければならない。

練習前には体温を上げる
 人間の筋繊維と結合組織は、ゴムバンドのようである。ゴムバンドが冷えているのに激しい勢いで引っ張れば、切れたり壊れたりする。しかし同じゴムバンドを暖めてから、急に引っ張ったりしないでゆっくりと伸ばせば、弾力性が出る。同様に冷えた筋肉を急に曲げたり伸ばしたりすると切れることもある。筋肉を温め、それから静的なストレッチングでゆっくりとストレッチすれば、効果的に曲げたり伸ばしたりできる。体温が上がると、筋肉の収縮や弛緩のスピードも増す。軽いジョギング、縄跳び、体操などが体温を上げるのに効果がある。

一貫したストレッチング手順で行う
 ストレッチングをすると筋肉はリラックスし、血液循環や酸素の供給が有効に行われるようになる。柔軟体操も、疲労した筋肉から乳酸を運び出すことにより、筋肉痛を減らすのに役立つ。
 しかしストレッチングのしすぎは、靭帯や関節に損傷を与える。従って、静的(非運動的)は基本を含んだ、行いなれているプログラムを毎日実施するのがよい。

以下のガイドラインは、ストレッチングの手順として守ること
1.体温が1℃上がるか汗が出始めるまでウォームアップする
2.静的(非運動的)で段階的なプログラムのみを行う
3.すべての筋肉群をストレッチする
4.ストレッチしすぎない。またストレッチングが不足してもいけない
5.練習の開始前に、もう1回汗を出す

2008年7月27日日曜日

適切なケガの予防と治療・1

 ソフトテニスの選手は、他の種目の選手よりも多くの試合や練習をする。接触スポーツのような打撲傷や挫傷(ざしょう)にはあまり縁がないが、試合や練習が続くと多くのストレスと緊張に関係したケガが起こる。
 腱(けん)や靭帯(じんたい)のような身体の結合組織が影響を受け、筋組織、滑液包(かつえきほう)、腱鞘(けんしょう)や、身体の他の潤滑油的な組織もまた危険にさらされる。
 ソフトテニスは1年を通して行うスポーツである。他の種目の多くはオフシーズンがあり、選手は十分に休息したり身体を癒(いや)したりできる。しかしソフトテニスでは、次の試合や練習の休みない追求が始まるので、スピードプレイへの準備が十分に整う前に試合に引き戻されることが多い。そしてそのため、再びケガをしたり、ケガがぶり返す機会が増える。ソフトテニスの選手は、身体に過度のストレスをずっと課していることが多いため、ケガの予防処置や治療について理解することは、きわめて重要である。

2008年7月26日土曜日

ストレッチングとコンディショニング・7

ケガの予防の考え方

 これでプレイ前後の運動の流れについては、ひと通り説明したわけだが、最後にケガの予防の考え方全般について、いくつか付け加えておこう。
 ここまででも何度か述べたが、ケガの予防でもっとも大切なのは、つねに自分の身体の状態を把握しておくということである。これはレギュラー選手であろうとなかろうと、同じことだ。結局それが、痛みや異変に対して敏感であるということにつながるのだ。
 ソフトテニスは、オーバーユース(使いすぎ)によるケガが多いスポーツである。つねに身体のチェックを怠らずにいれば、どこかでシグナルが現れるはずだ。したがって、急に激痛がきたりするのは、普段そういったシグナルを見落としている証拠である。
 また、ソフトテニスのケガというのは、よく使う部分の筋肉が弱いということと、筋力がアンバランスであることが、主な要因になっている。例えば、肩や肘は、ソフトテニスでは特によく使う部分。にもかかわらずそこが弱いと、ケガに結びつくのだ。そういう認識を持って運動をしていけば、大きなケガには至らないだろう。また筋力のアンバランスについても、例えば背筋が著しく強いのに、腹筋が弱かったりすると、どこかに負担がかかり、ケガにつながる。あるいは右足をケガした後、右足ばかりトレーニングしてアンバランスになると、今度は左足に負担がかかってケガしたりする。そうしたことを念頭において、バランスよく身体を鍛えることが大切だ。
 最後に、これは予防ではなく再発防止の話になるが、ケガというのは、痛みがあるときよりも、痛みがなくなってからの方が重要だということだ。多くの人は、ケガをすると、痛みがあるうちは治療やリハビリをしっかり行うが、回復して痛みがなくなると、そこで終わりにして、すぐにプレイに復帰してしまう。しかし、ケガをする以前よりもその部分を強くしておかなければ、また再発する可能性が高く、意味がないのである。受傷前の体力、筋力レベル以上まで高められるように、痛みがひいた後も継続してトレーニングすることが大切だ。

2008年7月25日金曜日

ストレッチングとコンディショニング・6

 ではそれぞれ順を追って説明していこう。まずウォーミング・アップの最初は、リンバリング・アップと呼ばれるものから始める。リンバリング・アップとは、軽い体操のことで、いわば「ウォーミング・アップのためのウォーミング・アップ」である。ラジオ体操のような身近なものでも良いし、それほど長くやらなくても良い。屈伸や伸脚、前後屈などのごく簡単なメニューでも十分だ。用はゆっくり身体を動かし始めるということである。
 それが終わったら、次は身体を温めるためのジョギング。「ランニング」ではなく、あくまで「ジョギング」なので、速く走る必要はない。ゆっくりと、軽く汗ばむ程度に走れば十分。これは夏季でも同じである。そうして徐々に身体が温まってきたら、いよいよストレッチングに入る。
 ストレッチングで気を付けなければならないのは、やはり前述のように暖かい場所でやるということ。とくに冬のような寒い時期はなおさらだ。体育館などがあればそこで行うのがベストだが、そうでなければ室内や、日当たりがよく風の通らないところを探して行うと良い。そしてストレッチングの後は、一度汗を拭いてからコートに立つなどの配慮も、ぜひとも必要だ。
 もうひとつ意識しなければならないのは、ただ漫然とストレッチするのではなく、自分の身体の状態を細かくチェックしながら行うということ。身体の各部を伸ばしながら、筋肉の張りはどうか、関節の柔軟性はどうか、痛みや違和感はないかなど、慎重にチェックするのだ。普段と比べて少しでも異変があったら、それを見逃してはいけない。
 ストレッチングの後はいよいよコートに立つ。しかし、いきなりハードに打ち出すのは禁物。まずは軽い乱打から始める。ここまで行ったウォーミング・アップは、いわば運動をするための準備。ようやく身体を動かす準備ができたということなので、次はソフトテニスをするための準備が必要なのだ。それが乱打というわけである。最初は短い距離からボレー・ボレーで始めて、それから徐々にダイナミックにしていくとよい。
 また、乱打でも、ただ漫然と打つのではなく、自分の身体の状態をチェックしながら打つことが大切。ボールを打ちながら、首、肩、腰、足など、それぞれの状態を1カ所ずつ確かめていく。ボールを打った感覚が良かったからといって、それで身体の調子がよいと捉えてしまうと、ケガにつながるので気を付けてほしい。
 乱打から徐々にペースを上げていったら、あとは本格的なプレイに移る。これに関しては、それぞれに思い切りプレイすればいいわけだが、ただその間も、身体の各部の状態のチェックは忘れずに。動きの悪い部分があったら、プレイ中でもこまめにストレッチすること。
 プレイを終えたら、次はクーリング・ダウンだ。クーリング・ダウンのストレッチングは、基本的にウォーミング・アップの時と同じメニューで良い。やはり少し身体を温めてから行うようにする。また、プレイで特に疲労した部分や、以前にケガをしたことがあり不安があるという部分は、そこを重点的にストレッチするなり、⑦のコンディショニング・エクササイズを平行して行うと良い。コンディショニング・エクササイズとは、身体の各部の機能や能力を高める運動のことで、筋力トレーニングなども含んだ総合的な運動。ストレッチングの中に、これを織りまぜて行うのである。たとえば肩に不安があるなら、肩のストレッチングの前に、肩のコンディショニング・エクササイズを組み入れて行う、という具合だ。
 そうしてストレッチングが終わったら、クーリング・ダウンはとりあえず終了である。あとは自宅に戻ってから、あいている時間があったときに、特に強化したい部分のコンディショニング・エクササイズをやるとなお良い。

2008年7月24日木曜日

ストレッチングとコンディショニング・5

プレイ前後の、理想的な運動の流れ

①リンバリングアップ(軽い体操)・・・・・・ラジオ体操など、簡単なもので良い
②身体を温めるためのジョギング・・・・・・軽く汗ばむ程度。夏季も同じ
③ストレッチング・・・・・・冬は暖かく、風のない場所で行う
④プレイのための準備(乱打など)・・・・・・最初は軽く、徐々にダイナミックに
⑤本格的なプレイ
⑥クーリング・ダウンのストレッチング・・・・・・身体を温めてから行う
⑦コンディショニング・・・・・・自宅で行うか、⑥と平行して行う

2008年7月23日水曜日

ストレッチングとコンディショニング・4

プレイ前後に行うべきこと

 ストレッチングの前に身体を温めることの必要性は理解できたことと思う。言うなれば、ストレッチングは、ウォーミング・アップの一部分でしかないわけだ。ではウォーミング・アップ全体は、いったいどのような流れで行えば良いのだろうか。
 下記の表は、ウォーミング・アップからプレイ、そしてクーリング・ダウン(整理運動)までの流れを示したものである。①から④までがウォーミング・アップにあたり、⑥と⑦がクーリング・ダウンにあたる(⑦は帰宅後に行っても良いので、その場合はクーリング・ダウンには当たらない)。ストレッチングは、その両方に含まれている。

2008年7月22日火曜日

ストレッチングとコンディショニング・3

身体を温めてからストレッチしなければ効果は低い

 たとえば冬の寒い日、コートに到着し、すぐにコートサイドでストレッチしている人がいたとする。多くの人はそんな光景を見ると、「偉いなあ」とか「感心だなあ」などと思うだろう。しかしそのようなストレッチングは、実はまったく誤解だらけの行為なのだ。
 はっきり言って、身体が暖まっていない状態でいきなりストレッチしても、ほとんど効果はない。ストレッチングの前に、簡単な体操や軽いジョギングをして、身体を温めてからでないと効果がないのだ。また、ストレッチングをする場所も、なるべき暖かいところを選ばなくてはいけない。風の通りやすいコートサイドなどではなく、室内か、暖かい日溜まりなどが理想的。そうでなければすぐに身体が冷えてしまい、効果は上がらない。
 身体が冷えているということは、すなわち関節の可動範囲が狭く、筋肉の動きも悪いということを意味する。その狭い範囲の中でストレッチするよりも、身体を温め、可動範囲を広げてから行う方が効率が良いというのは、考えてみれば当然の道理だ。思い浮かべてもらえばわかると思うが、風呂に入った後に屈伸などをやると、普段より柔らかくなっていると感じることが誰でもあるはずだ。それだけ身体が温まっているときと、冷えているときとでは、可動範囲に違いがあり、それはストレッチングの効果にもそのまま影響する。身体が固い状態のときに、もし余分に力をかけてしまったりすると、ケガにつながることさえあるのだ。

2008年7月21日月曜日

ストレッチングとコンディショニング・2

「ストレッチング」イコール「ウォーミング・アップ」ではない

 一般的に、ケガの予防や再発防止において、ウォーミング・アップ(準備運動)の重要性は、よく理解されている。さまざまな雑誌や本で、ストレッチングのメニューが写真や図解入りで分かりやすく紹介されており、諸君もそうしたものを目にする機会もあるだろう。したがって、身体の部所ごとにどのようなストレッチングをすれば良いかということは、皆ある程度の知識を持っているはずだ。
 ストレッチングのメニュー自体は、雑誌などで紹介されている基本的なもので十分である。それらを大い活用すると良いだろう。ただ問題なのは、多くの人が、プレイ前後にしっかりそれらのストレッチングを行っていれば、それで安全だと思っていることだ。つまり「ストレッチング」イコール「ウォーミング・アップ」という認識を持っており、ストレッチング以前にも準備が必要であることを、ほとんどの人が理解していない。また、ストレッチングを行う場所や、行いながら何をチェックすべきかということも、意識している人は少ない。すなわち、メニューだけは知っているが、ストレッチングの総合的な考え方、位置付けに関しては、ほとんど知らないというのが実状だろう。

2008年7月20日日曜日

ストレッチングとコンディショニング・1

ケガの予防、再発防止のために

 ケガの予防あるいは再発防止のためには、ストレッチングや、ウェイト・トレーニングなどのコンディショニング・エクササイズが欠かせないことは、誰でもわかっているはずだ。しかし多くの人は、その具体的なメニューは知っていても、それをいつ、どのような状況で行うべきかなどは、理解していない。「プレイの前後にストレッチすれば大丈夫」ぐらいの認識しかない人がほとんどだろう。また、ストレッチするときに、自分の身体の各部の状態をしっかり把握せずに行っている人も、かなり多いのではなかろうか。しかしそれでは、効果はほとんど期待できない。ストレッチングの位置付けや、総合的な予防の考え方を踏まえた上で、具体的にどのようなストレッチングやコンディショニングを行えばいいのか、紹介していこう。

2008年7月19日土曜日

参考文献

Coaches Guide to Sport Psychology by Rainer Martens, Human Kinetics Publishers
Life and Health, 3rd edition by Ralph Grawunder and Marion Steinmann, Random House
Mental Toughness Training for Sports by James E. Loehr, J. Osawa & Co. Ltd.
Personality Types by Taibi Kohler, Kohler and Associates Processed Communication Managers.
Playing Tennis To Win by Robert Nideffer & Rosalyn Fairbank, UNI Agency
Tennis Medic by Steven R. Levinsohn & Harvey B. Simon, The C. V. Mosby Company
Total Tennis Training by Chuck Kriese, Master Press
前田理生(ソフトテニス部監督)
瀬戸口敏志(ソフトテニス部監督)
ソフトテニス指導教本(大修館)日本ソフトテニス連盟
ソフトテニスコーチ教本(大修館)日本ソフトテニス連盟
月刊ソフトテニスマガジン(ベースボールマガジン社)
朝日新聞
国際ルールソフトテニス(講談社)若月道隆
実践軟式テニス(大修館)石井源信・西田豊明
イラストで見る軟式テニスドリル(大修館)石井源信・他3名
月刊テニスジャーナル(スキージャーナル社)
メンタルトレーニング・勝つための精神強化法(ナツメ社)高橋慶治

2008年7月18日金曜日

目次


ストレッチングとコンディショニング
適切なケガの予防と治療
応急処置と簡単な治療について
競技に合わせ「適時適食」
正しい栄養で練習を助ける
フットワークのトレーニング
トーナメントで勝つために
試合に強くなるために試合を観察する方法
相手の身体能力を見極めて勝つ方法
タメを生み出すポジション取り
ワンランク上の前衛になる
メンタルトレーニングについて
ソフトテニスの心理学
試合での心理的トラブルとその対処法
ピンチから脱出する方法
集中力を高める視線のコントロール
勝利を得るための精神コントロール
弁解や防衛規制を避ける
個人スポーツのクラブの運営について

「おまけ」
正しい水分補給
試合前の準備に集中する

2008年7月17日木曜日

前書き

 本書は、過去10数年間にわたって部のミーティングに使用してきた資料を、1冊にまとめたものである。その時その時に必要と思われる内容を取り上げてきたため、重複する部分が少なからずある。また、バルセロナやアトランタ・オリンピックの話題を前提にしたり、時事的な内容も含まれている。だが、特に書き直すことなく、そのまま収録した。
 コートの上でボールを打つことだけが練習ではない。試合で勝つためには、強くなるためには、技術だけではなく、体力も精神力も向上させなければならない。体力をつけようと思えば、毎日の厳しい練習に取り組むことはもちろん、計画的・継続的にトレーニングを積む必要があるが、そのためにも健全な身体づくりが欠かせない。食生活(栄養補給)や規則正しい生活(健康管理)への気配りが大切である。
 また、大事な場面で集中力を発揮し、多少のことではくじけない粘り強い精神力を身につけるためには、日常の生活が練習なのである。苦手な科目の勉強でも投げ出さず、自ら困難を乗り越えることによって、ピンチにも動じない我慢強さが養われる。行事などで他人がやりたがらないような仕事でも率先して取り組むことによって、緊張した場面でも試合をリードする思い切りの良さや自信が身につく。そして部活のために制限された勉強時間で、最大限の効果をあげられるよう、集中力を鍛えるのだ。その上で、試合中に自分の感情をコントロールできるようなテクニックを習得することになる。
 諸君の先輩達は、本書に収められた内容をもとに、また各自が工夫して、素晴らしい成果をあげた。秋の国体まで部活を続けながら、一般入試で大学に進学した先輩もいる。食事のメニューをすべて自分で決めていた先輩もいる。口で言うのは簡単だが、保護者の協力も欠かせないし、実際には並大抵のことではない。
 毎日毎日、練習すればするほど、技術的には上手になっていく。体力的にも精神的にも、ある程度までは伸びるだろう。しかし、ただ漫然と取り組むだけでは、すぐに限界が来てしまう。そこでワンランクアップするためには、みんなと同じ練習をこなしているだけでは不可能だ。朝の自主練習や、家での自主トレも必要であるが、壁に突き当たったときのヒントのいくつかが、本書には収められている。どれだけ取り組むかは諸君次第だが、先輩達と同様、有効に利用してくれるよう期待している。